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Majewelune World 第3話 HP:http //www.geocities.jp/retsuzanmura/ HP:http //www.vector.co.jp/soft/win95/game/se274862.html +スクリーンショット ゲーム内容の説明 関連作品 パロって!!ファイター スペシャルヒーローズダイナマイト バーニングエンジェル 魁!!男塾 指武利遊戯 Majewelune World 第1話 Majewelune World 第2話 Majewelune World 第4話 Majewelune World 第5話 Majewelune World 第6話 Majewelick Impact Majewelune World SPECIAL マジュウェル マジュウェル The second story マジュウェル The second story Like a sky METAL銃 METAL銃II METAL銃III -Shout of the arms- METAL BLADE RETSUZAN ALL STAR KGT 95 VERSION ボツってファイター 弾断打駄々DAN・Z 弾断打駄々DAN・Zvs激痛 弾断打駄々DANIII 弾断打駄々DANIII2nd~THE second grade inferno~ 激-GEKI- 激痛-GEKI 2- 登録タグ 2D格闘ツクール2nd(フリーウェア) 最終更新日時 2011-08-16 21 58 47 (Tue)
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隕石 第3話 俺「ストライクウィッチーズは世界を魅了する」 311- 作者 ID Cs0L3vds0 総レス数 XXX このページでのレス数 XX 311 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 33 08.89 ID hi0b3Wx50 投下開始します Q.これいつになったら盛り上がるの? A.知らん 前回までのあらすじ アフリカに来た謎の男ウィッチはストライカーも銃も持っていなかった。 予備の装備を与えて適正を確かめる圭子達。 見事、お眼鏡にかなった「隕石」と名乗るウィッチ。 リベリオンから来た彼はこの地に何をもたらすのか。 まずは、駆けつけ三杯。 312 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 36 18.53 ID hi0b3Wx50 …… … 古子「うーん今日もいい天気!」 朝日を浴びながら背筋を伸ばす。 筋肉がほぐれるような快感。これだけで身長が何cmか伸びた気がする。 俺「あー、えーっと‥‥ルコ、だよね?」 古子「え? あ、はい」 後ろから声をかけられ振り返ると、先日拾った男ウィッチがそこにいた。 これから先、少しの間かもしれないけど、一緒に戦う仲間だ。仲良くしないと。 古子「おはようございます」 俺「うん、おはよう」 彼もまた起きたばかりのようでまだ日差しが眩しいようだ。 というか本当に12時間寝たのかこの人は。 俺「名前は、ルコであってたよな?」 古子「ええ、北野古子です。みんなからはルコって呼ばれてますね」 俺「なるほど。俺は"俺"だ。よろしく」 そういうと手をさしだしてきた。私はその手を握る。 ‥‥しかし見れば見るほどきれいな人だ。女と言っても通じるんじゃないかな。 313 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 39 29.02 ID hi0b3Wx50 古子「あの時はありがとうございました。 あなたが居なかったらと思うと‥‥」 あの時とはマーケットの時のことだ。 あのままビームを受けていたら私のシールドは破れて‥‥ 俺「いいんだよ。俺の力はそのためにあるんだから‥‥」 そういうと左手のひらをじっと見つめる彼。 なにか、思いつめたような目をしている。 ‥‥過去になにかあったのだろうか。 俺「で、お願いがあるんだけど」 古子「はい?」 そういうと彼は目線をずらす。 俺「化粧水ってないかな?」 古子「え?」 314 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 42 06.61 ID hi0b3Wx50 俺「化粧水。肌に塗る奴」 古子「え、ええ、一応ありますけど‥‥何に使うんですか?」 俺「えーっと‥‥肌に塗るしか思いつかないんだが」 変わった人なんだなと思うのと同時に、だからこの人はこんなに綺麗なんだなとも思った。 なんだか可笑しくなってちょっと笑ってしまった。 俺「あー、やっぱり変か」 古子「いえ! きれいで居たいと思うことは何もおかしくないですよ。 むしろ、せっかくそんなに綺麗なんだからお手入れしないともったいないですよ」 俺「ハハハ、ありがとう」 よくよく肌を見ると本当に綺麗だ。私なんかよりもずっとしっかり手入れしていそう。 古子「じゃあ、待っててくださいね」 ちょっとだけ悔しくなりながら、私は化粧道具を取りにテントへ戻った。 315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 44 52.74 ID baHZ0+GG0 これは古子ルートなの ついに期待しちゃっていいの? チハたんばんじゃーい!なの? 316 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 45 29.03 ID hi0b3Wx50 圭子「あら、朝から一緒なのね」 鏡があったほうがいいということで、結局二人でテントまできた。 古子「おはようございます。ついさっきそこで会いまして。 化粧水を使いたいというんで、いれちゃったんですけど」 圭子「大丈夫よ。もうみんな起きてるし、着替えも済ませてあるわ」 俺「おはよう。じゃ、さっそく鏡貸してくれるか?」 古子「あ、はい。こっちです」 鏡の前へ案内し、化粧水を渡す。 パトリシア「ふーん‥‥本当にきれい」 アビゲイル「本当に男なの?」 俺「いやいや、ここの人たちはお世辞が上手だな」 いつのまにか何人か集まってきていた。やはり珍しいのだろう。 総じて彼の評価は高かった。 ウィッチは総じてかわいい、美しい。 男のウィッチなんて初めて見たが、そっちにも適応されるのだろう。 ‥‥男としてそれはどうなんだろうか。本人はまんざらでもないみたいだが。 317 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 48 07.31 ID hi0b3Wx50 手際よく肌の手入れを済ませる彼。この手つき、慣れているな。 圭子「おしゃれに気を使うなんて、よっぽど女の子ね」 俺「むしろ男だからというか。女の子ならこんな事しなくても綺麗だからね」 そういうと、回りに集まっていたウィッチ達の顔を見回す。 何人か照れている。 フレデリカ「ほんとによくわかってるわね」 シャーロット「お、俺さんも、すごくキレイデス!」 俺「君たちほどじゃないさ。ルコ、ありがとう」 319 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 51 15.53 ID hi0b3Wx50 席を立とうとする彼をパトリシアが抑えつけた。 パトリシア「せっかくなんだし、化粧もしてみない?」 マルセイユ「おもしろそうだな。せっかくだし女装もさせてみるか」 俺「おいおい、マジか?」 なんだか変な展開になってきたぞ? おもしろそうだけど。 男の子のおしゃれは分からないがそれが女装となれば話は別‥‥かも? 古子「やりま――!」 その声をかき消すようにけたたましい音が外から響いた。 「敵襲ーー!!」 第 三 話 頭と銃と盾 320 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 54 28.66 ID hi0b3Wx50 ……… …… … マルセイユ「ったく、面白くなりそうなときに来るなって話だな」 圭子「そうも言ってられないでしょ」 俺「まぁ、また今度ってことで」 俺たち航空ウィッチ達は発着所へ急いでいた。 ライーサ「うーん‥‥女装か‥‥」 隣を走るライーサが走りながらこちらの顔を観ている。 俺「前向いてないと転ぶぞ」 なんて言ったら、ほんとに何かに躓いてバランスを崩したライーサ。 ライーサ「っ!?」 俺「っと!」 俺は咄嗟に手を伸ばし彼女の腕をつかみ、こちら側へ引っ張る。 結果的に抱き合うような形になってしまった。 321 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 57 41.45 ID hi0b3Wx50 彼女の驚いた顔が目の前にある。 何があったか理解するのに数秒かかっているようだ。 こう近くでウィッチを見れるというのも男ウィッチの特権だな。 俺「なにも実践しなくてもいいんだぞ」 ライーサ「え、あ、ありがとう‥‥」 目をそらすライーサ。 どうも赤面しているようだ。 マルセイユ「ネウロイは待ってくれないぞ!」 前を走っていたマルセイユが振り返り叫んだ。 俺「その通りだ。走れるな‥‥えーっと、ライーサだよな」 ライーサ「あ、うん、いこう」 表情がもとに戻り、再び足を動かす。 そっと指をほどき、掴んでいた腕を離した。 圭子「役得ね」 俺「あの程度でか?」 圭子「あらあら、言うわねー」 俺「慣れてるからな」 322 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 00 21.31 ID hi0b3Wx50 ……… 俺「さて、俺はどうすればいい」 ストライカーを履き大空へと飛び立った俺達。 安定飛行に入りながら圭子へ尋ねた。 圭子「そうねぇ‥‥」 そういったまましばらく考えこむ。 圭子「それじゃあ私の三番機。兼、真美のサポートに入ってくれるかしら」 俺「‥‥サポート?」 圭子「シールドには自信あるんでしょ?」 なるほど。長所を活かすやり方か。 俺「さしずめ、頭、銃、盾と言ったところか。剣のほうが格好付くかな?」 圭子「いいわねそれ。私たちの小隊の触れ込みはそれで行くわ」 真美「アハハ‥‥」 俺「そうと決まれば、しっかり守ってやるからな」 真美「あ、はい!」 銃は元気よく返事をした。 324 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 04 08.27 ID hi0b3Wx50 俺「あれだな‥‥」 耳からは今しがた見つけたネウロイの情報を、ケイが各部隊へ伝える声が聞こえる。 中型2体に小型10体。それに小型飛行ネウロイ――フライングゴブレットというらしい――が、6体。 なかなかの大部隊だ。だがこちらとて数では引けを取らない。 圭子「じゃあ、いくわよ!」 俺「了解」 真美「了解!」 いよいよ始まる。ここアフリカでの俺の戦いが。 圭子「しっかり守ってね?」 ウインクを飛ばしてくる圭子。一度上がりを迎えている圭子はシールドを貼ることができないはず。 これからは俺が彼女の盾にならないと。 っていうかシールド貼れないで前線に出るってすごいな‥‥ さすがベテラン‥‥もちろん口には出さない。 その後ろで飛ぶ真美も守ってやらねば。実質この三人の中で攻撃できるのは彼女だけだ。 二人を守る。それが俺の任務。 俺「出来る限り、な」 そこまでの実力が俺にあれば、だが。 ‥‥守る。絶対にだ。 325 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 06 11.16 ID hi0b3Wx50 俺を先頭にグングンと地上の中型ネウロイへと近づいていく。 奴らもさすがに気づいたらしく、こちらへ砲塔を構えいつでもビームを撃てるようにしているようだ。 真美「撃ちます!」 有効射程に入ったらしく、真美が叫ぶ。 その声と同時に赤い閃光が飛んで来た。 俺は両腕を交差させ、すこし溜めた後、その腕を目の前へ大きく突き出し魔力を解放する。 すると一秒ほどで俺を中心として、青い魔方陣が前方へ展開された。 その大きさは俺はもちろんの事、後ろを飛ぶ二人も余裕で飲み込むほどの大きさだった。 魔方陣へビームが着弾すると、跳ね返り、散っていく。 そのビームが途切れるのとほぼ同時に、後ろから爆発音が聞こえた。 直後、砲弾とも言える大きさの弾が地上のネウロイへ向かって飛んでいく。 すんでのところでネウロイは回避し、弾は砂を巻き上げる結果だけに留まってしまった。 俺「おしいな」 真美「もう一発‥‥!」 言うと同時に先程の爆発音が聞こえる。 が、ネウロイは素早く俺達の下側へ移動し、死角へと逃げた。 326 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 09 24.66 ID hi0b3Wx50 圭子「一度離脱して、再度仕掛けるわよ」 その声を聞くやいなや俺は減速し、真美たちの後ろへと移動する。 そしてすぐさま反転し、シールドを展開した。 同じように空気へと帰る赤き閃光。 もう一体の中型ネウロイのビームだったようだ。 奴らコンビネーションまで出来るのか? めんどくさい‥‥ まあ今の軌道ならわざわざ俺が守るまでもなく外れていたと思うが‥‥ 俺「さっさとどっちか壊さないと面倒だな」 圭子「そうね。地上部隊は小物を相手してるし、私たちで奴らを惹きつけないと」 マルセイユ「惹きつけるならまかせろ」 そう聞こえた途端、二人のウィッチが中型ネウロイへ突撃するのが見えた。 圭子「まるで一等星並の目立ちたがりやね」 俺「一等星は一つじゃないってことを教えてやろうぜ」 反転してきた真美へと言葉を掛ける。 真美「が、がんばります!」 329 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 13 21.90 ID hi0b3Wx50 ……… …… … マイルズ「マイルズ隊砲撃開始!」 号令と共に攻撃を開始するマイルズ達。 それと同時にパットンガールズやシャーロット達も攻撃を開始する。 古子も目標へ向けて、前進する。 目標は目の前に迫る黒き集団。 小さいが、こんな奴らでも人類を脅かす脅威だ。 容赦なんてしない。 古子「あったれー!」 目の前に迫る小型のネウロイ一体に狙いを定めトリガーを引く。 飛んでいく弾はネウロイをかすめ、消えていった。 古子「ちっ!」 330 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 14 01.77 ID baHZ0+GG0 わーい、チハたんの三八式ェ・・・ 331 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 15 18.01 ID hi0b3Wx50 マリリン「もっとしっかり狙いなさいな! こんなふうに‥‥ね!」 後ろから声が聞こえた。 その言葉と同時に発射された弾はまたもネウロイをかすめた。 古子「‥‥」 マリリン「‥‥」 古子「‥‥」 二人とも静かに銃を構え直す。 マリリン「‥‥すばしっこいわ、ね」 古子「そうです、ね!」 二人から同時に発射された弾は、それぞれネウロイの胴体へ当たる。 その威力はネウロイを無力化するのには十分だった。 332 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 18 23.86 ID hi0b3Wx50 古子「ふう‥‥」 額から頬を通り、顎まで滴る。 ここは熱い。 マリリン「安心してる暇はないわよ! 次行きましょう!」 シャーロット「伏せて!」 次の瞬間、頭の上で爆発音が響いた。 二人は咄嗟に頭を抱え地面に突っ伏したかったが、一歩遅かったようだ。耳がキンキンしている。 シャーロット「あぶなかった‥‥」 飛び出そうになった心臓の音を聞きながら爆発した方を見ると、ネウロイの破片が降っていた。 どうやら飛行杯がすぐ近くまで来ていたようで、それをシャーロットが狙い撃ちしたらしい。 古子「あ、ありがとうシャーロット。助かったわ」 シャーロット「さっさと退治して帰りましょー!」 マリリン「同感ね!」 元気だなあ。でもこんな感じでないと気圧されちゃうもんね。 古子「よーし! がんばるぞー!」 そう言いながらまずは右足を一歩、前へと踏み出した。 333 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 13 18 32.45 ID hq1T2ldoO そうだなーすばしっこいなら仕方ないなー(棒読み) …支援 640 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 33 14.97 ID ERfrQrjT0 ……… …… … 先ほどと同じように突撃をかける俺達。 今度はこちらへビームを撃ってくる暇はなさそうだ。 そのかわり、さっきより動きが激しいので狙いを定めづらいようだが。 真美「‥‥撃ちます!」 弾丸が飛ぶ。が、激しく動くネウロイには当たらず、砂を巻き上げるばかりだ。 俺「もっと近づかないとダメか」 そう言うと真美の頭から生える猫の耳がしょんぼりとしおれる。 俺「なぁに。そう簡単に撃破されちゃ、みんなの仕事がなくなっちゃうだろ」 真美「でも‥‥」 俺「マルセイユも言ってたぞ、"当たる地点まで近づいて撃てばいいだけ"ってな」 圭子「そこまで近づければの話だけどね」 642 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 36 09.22 ID ERfrQrjT0 割って入ってきたケイの言葉を聞き、鼻で笑い飛ばす。 俺「何のために俺がいるんだ?」 そういうと苦笑いを浮かべるケイ。 圭子「強引ね」 俺「強引な男は嫌いか?」 今度はケイのほうが鼻で笑う。 圭子「嫌いじゃないわ。ね、真美」 真美「うえぇ!?」 急に話を振られ萎えていた耳をピンと立たせた。 撫でたい。 俺「真美の恋愛論は後のお楽しみだ。一気に行くぞ!」 そういうと俺はシールドを展開し、スピードを上げた。 圭子「もう少し角度をつけて。横っ腹から撃ちぬきましょう」 俺「了解! しっかり付いて来いよ!」 真美「は、はい!」 643 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 39 20.39 ID ERfrQrjT0 先程より下へ角度をつけ地面へ近づく。 まるで墜落してるみたいだ。 ‥‥嫌なことを考えてしまった。 圭子「今よ!」 その声を聞き、体を起こす。 俺達の向かう方向が茶色い地面からネウロイの方へと変わるが、スピードは変わらない。 奴もこちらへ気づいたようだ。砲塔をこちらへ向けビームをチャージし始めている。 俺「マルセイユ! ライーサ! ちょっと離れてろ!」 マルセイユ「言われなくともっ!」 そういうと彼女たちは上空へと飛び上がった。 これで心置きなく銃を撃てる。 俺「真美! シールドは任せて、お前はありったけぶち込め!」 真美「了解! 行きます!!」 シールドの展開。ビームの発射。40mmの発射。 それがほぼ同時に起きた。 645 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 42 41.74 ID ERfrQrjT0 中型ネウロイがすっぽり入りそうな大きさのシールドに、ビームはかき消されていく。 正面からの攻撃に対してはほぼ無敵だ。 連続して砲弾が飛んでいく。 一発目はビームに迎撃された。が、すぐに二発目、三発目が飛んでいく。 真美「倒れろぉお!」 5発目に放った弾がネウロイの胴体に直撃した。続けて6、7、8、9と続けて弾丸が直撃する。 その衝撃は大きく、ネウロイは後ろへ吹き飛ぶ。その先にはもう一体の中型ネウロイがいた。 真美「よし!」 どうやらマルセイユたちがその場へ追いやっていたようだ。さすがというべきか。 それともこれもケイの作戦か? 俺「仕上げ!」 俺達は急上昇し、上空から身動きが取れなくなったネウロイへと狙いを定める。 見ると、マルセイユやライーサも丁度銃を構えたところだった。 チェックメイト 俺「詰みだ!」 吹き飛び転げたネウロイ達へ銃弾が降り注いだ。 俺も一応撃ったけど‥‥まあ、無いよりはマシ‥‥だったか? 弾の無駄遣いと言われたら終わりかもしれんが。 中型二体のネウロイのコアは鉛の雨で流され、砂へと帰っていった。 646 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 45 57.81 ID ERfrQrjT0 ……… …… … ネウロイの数もだんだんと少なくなってきた。 パトリシア「もってけー!」 嬉しそうな叫びと同時に砲弾が3発ネウロイへと叩き込まれる。 中型ならば体制を崩す程度だったかもしれないが、 小型ならばそうもいかない。 その勢いに足が耐えられないようで、大きくその体を宙へ浮かせた。 アビゲイル「もらった!」 その宙へ浮く的へめがけ、砲弾を放つ。 先程よりも大きな衝撃によって、その体は大きく飛ばされ、 地面に着地する前に、バラバラに吹き飛んだ。 パトリシア「ビューリホー!」 アビゲイル「イェス!」 マリリン「さあさあ次よ!」 647 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/04(金) 11 48 39.47 ID BuAONdJt0 いつの間にパトリシアはスコットランド人の大尉になったwww 648 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 48 42.82 ID ERfrQrjT0 と、残ったネウロイの方を向くと、なにやら小型ネウロイが集まってきている。 マリリン「逃げる算段でも立ててるのかしらー?」 パトリシア「遺言はすんだかし――」 瞬間集まったネウロイが凄まじい跳躍を見せた。 そしてみるみるうちにネウロイがネウロイの上に着地、さらにその上に‥‥ といった具合にネウロイタワー(仮)が完成した。 パトリシア「な‥‥」 「「なんじゃそりゃー!」」 三人はおもいっきり叫んだ。 もちろん答えは帰って来なかった。 649 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 51 29.08 ID ERfrQrjT0 古子「みなさん無事ですか!」 後ろから古子が走ってきた。 パトリシア「あ、ルコ。一体誰の心配してるのよ」 アビゲイル「あなたこそ大丈夫?」 古子「ええ、なんとか。それであれは一体?」 マリリン「さあ‥‥」 視線を戻すとネウロイタワー(仮)はなんだかぐらついている。 数えるとその数5体。一番下に一回り大きいネウロイが、 その上に4体、下から東西南北へ砲塔が向いている。 そのうちグラつきが収まり、こちら側の砲塔が4人の方へ向いた。 パトリシア「くるわ! 散開!」 ネウロイ製の弾が着弾した地点にはもう4人は居なかった。 650 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/04(金) 11 52 33.48 ID BuAONdJt0 ついにネウロイさんも合体か・・・ 胸熱 651 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 54 46.38 ID ERfrQrjT0 マリリン「なんだか知らないけどお遊びもここまでよ!」 照準をネウロイタワー(仮)のほうへ向けるマリリン。 砲撃がすんだ後には必ず隙ができる。そこへぶち込めば―― マリリン「なっ――!」 こちらがトリガーを握るよりも前に、目の前に弾が迫る。 咄嗟にシールドを展開し防ぐが、バランスを崩して転倒してしまった。 マリリン「あたた‥‥」 パトリシア「マリリンしっかり!」 走ってきたパトリシアの手を取り、立ち上がる。 パトリシア「あいつらあんななりだけど全方位に砲撃できるし、 本命とは逆の方向に撃って反動軽減までしてるわ」 マリリン「ふざけてるわね」 すぐさま移動を開始。ちょうどマリリンの尻餅の後に砲弾が直撃し、 形の良い跡は消え去ってしまった。 652 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 57 37.37 ID ERfrQrjT0 ネウロイタワー(仮)を挟んでパトリシアとマリリンのちょうど反対側。 アビゲイル「ちょっとルコ大丈夫!?」 古子「は、はい! なんと――かぁ!?」 後ろに閃光と轟音を浴びながら走る。走る。走る。 ネウロイタワー(仮)を中心に円形に走る。走る。走る。 さっきから休む暇もなく爆発音がそこらじゅうから聞こえる。 なんとか攻撃を試みようとネウロイタワー(仮)の方に銃口を向けるが、 砲撃が続いているため走り続けなければならず、 一番下のネウロイがまるでカニのように素早い動きで移動している為、狙いが定められない。 アビゲイル「埒があかないわ! ルコ、いい話があるんだけど」 古子「な、なんですか!?」 アビゲイル「二手に分かれて逃げましょう! 」 古子「‥‥囮ってことですか?」 アビゲイル「そうとも言うわね」 古子「このままこけて撃たれるよりマシです!」 アビゲイル「そうね! じゃあ1、2の3で分かれるわよ! 1、2の3!」 653 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 00 36.37 ID ERfrQrjT0 掛け声と共にアビゲイルと古子はそれぞれ逆方向に走りだす。 アビゲイル「ちくしょー! こっちかー!」 砲撃はアビゲイルを追い続けた。 古子「こっちにも来てるじゃないですかー!」 古子の後にも砲撃が続いていた。いままで2門の砲撃が続いていたが、 それが1門づつに変わっただけのようだ。 古子「なにか‥‥なにか‥‥!」 古子は走りながらあたりを見回す。 どこまでも続きそうな砂。無骨にそびえ立つ岩。突き抜けるような青をした空。 砲撃を続けるネウロイタワー(仮)。そしてその回りを逃げ惑うパットンガールズ。 古子「そうだ!」 アビゲイル「あっ! ルコめ、岩場に隠れようっていうのね!?」 岩場の裏側の方へ走っていく古子。 ‥‥つまりネウロイタワー(仮)の標的がひとつ減るということ。 アビゲイル「お、覚えてなさいルコォ!」 砲弾の数が2倍に増えた。 そもそもこの作戦を提案したのはアビゲイルさんですよ、とは戦闘終了後の帰り道に聞くことができる。 654 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 04 13.02 ID ERfrQrjT0 マリリン「くっ‥‥あたらないわ」 逃げながらも何発か弾を撃ったが当たらない。 ただでさえブレブレの照準なのに、相手が動いていてはマルセイユぐらいでないと無理だろう。 パトリシア「まあそのうちマイルズ隊がっ!‥‥なんとかしてくれるでっ!‥‥しょっ!」 攻撃を避けながら投げやりな会話を続ける。 そのうち奴の回りをぐるっと回って正面からアビゲイルが走ってきた。 マリリン「あ、あれ? ルコは?」 アビゲイル「逃げたわ!」 パトリシア「なにそれ!」 なんて会話している場合ではない。 このままでは交差して走り抜けた瞬間、相手側の後ろから迫る砲弾にクリーンヒットしてしまう。 じゃあどこへ逃げる? 前と後ろはアウト。じゃあ右?左?上?下? そうこうしてるうちにもどんどんと2組の距離は近づいていく。 そこにもう一組、近づく影があった。 その影はパトリシア、マリリン、アビゲイルの頭上を超えて行った。 655 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 06 10.76 ID ERfrQrjT0 三人とも視界の端にその上空の影を捉えたようで、顔をそちらへ向ける。 "それ"はけたたましいエンジン音を発しながら、岩から発射された。 太陽を隠すその姿は人型で、銃を持ち、陸戦用ストライカーを履いていた。 見覚えがある影。 三人の口は少しづつひらきはじめ、一斉に同じ単語を発した。 「「「ルコォ!?」」」 頭上を飛ぶその人を驚愕の表情で目で、いや首で追う三人。 古子「いい加減に――!」 すさまじい勢いで発射された古子はネウロイタワー(仮)の頂点まで飛んでいくと、 一番上のネウロイをおもいっきり―― 古子「しなさーい!」 蹴っ飛ばした。 勢いのついた一撃を浴びたネウロイは、吹き飛んで砂地へ落下し、横転、動かなくなった。 一番上のいなくなったネウロイタワー(仮)の一番上に古子は器用に着地すると、 間髪入れずに銃剣を下のネウロイへ突き刺し、トリガーを引いた。 古子「おりゃぁぁぁあああああ!!」 ものすごい音共にネウロイタワー(仮)を貫通していく銃弾達。 それはネウロイタワー(仮)の動きを止めるのには十分すぎる量だった。 656 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 10 08.48 ID ERfrQrjT0 古子はトリガーにかけた指を緩めた。 銃からの音が途絶える。 すぐさま銃の先についた剣を折り、自由を取り戻す。 古子「とう!」 古子はネウロイタワー(仮)から飛び降りた。 その足元に手榴弾を落として。 一瞬の静寂。 直後黒い塔は盛大に爆発した。 宙へ浮く古子はその光を浴び、影をかぶる。 その姿は爆発の激しい光とのコントラストで、すごく絵になっていた。 一部始終を呆然と見ていた三人は慌てて、着地した古子のもとへと走った。 マリリン「ワンダホー! ファンタスティーック!!」 パトリシア「だ、大丈夫!?」 アビゲイル「すごい事するわね!」 古子「エヘヘ‥‥なんとかなりました」 その顔は今しがた大立ち回りした少女の顔とはとても思えなかった。 657 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/04(金) 12 11 06.34 ID BuAONdJt0 やめてチハたん凹んじゃう>< 658 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 12 31.26 ID ERfrQrjT0 ……… …… … 一段落といったように、俺達はケイの元へと向かっていた。 俺「やったな真美」 真美「俺さんのシールドのおかげですよ」 俺「いくらシールドがすごかったとしても、攻撃できないんじゃ意味ないけどな。 えーっと扶桑ではなんて言ったかな‥‥」 真美「‥‥攻撃は最大の防御ですか?」 俺「ああそうそうそれそれ。って今にして思えば真美は言葉は結構話せるんだっけか」 真美「一応ブリタニア、カールスラント、ローマ語はしゃべれますよ。 そういう俺さんだっていろいろ話せるみたいですけど」 俺「まあ‥‥人生何があるかわからないもんだからな」 溜息と共に遠くを見つめる俺。 思えば遠くまで来たもんだ‥‥ 659 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 15 30.64 ID ERfrQrjT0 圭子「二人とも無事?」 合流すると同時に定型文を投げかけてくるケイ。 真美「俺さんのおかげでなんとか」 圭子「そう。いい盾だったみたいね」 俺「賞賛は決着がついてからでも遅くはないぞ」 圭子「そうね。残った奴らの掃除にいきましょう」 俺「とは言っても、それはあっちのほうが得意そうだがな」 今の戦闘を省みる限り、中~大型なら俺たちのほうが得意そうだが、 小型が数で押してくるならマルセイユ達のほうが、武装やらなにやらで有利だろう。 圭子「あなただって同じような装備なんだから頑張りなさいな」 俺「軽く言ってくれるな。じゃあ俺は向こうに合流するぞ」 そんな小言を口にしながら俺はマルセイユ達の方へ飛んでいった。 660 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 18 18.05 ID ERfrQrjT0 俺「おいマルセイユ。俺だ。まだ敵は残ってるか?」 マルセイユ「ああ、まだ少し残ってるぞ」 先程の中型を倒した後、さっさと小型掃討に向かったマルセイユ達に合流した。 マルセイユ「もっとも、もうすぐなくなるがな」 俺「それは困る。せっかくの活きのいい練習台なんだ」 マルセイユ「自分の実力で勝ちとってみせるんだな」 俺「言われなくとも!」 魔力を込め、スピードをあげる。 ライーサ「すごいやる気ですこと‥‥」 662 名前:隕石 [sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 21 20.24 ID ERfrQrjT0 ……… …… … 連続する銃撃音と共に空を裂く銃弾は、飛行する黒い異形を撃ちぬいた。 マイルズ「飛行杯一機撃破! 後は!?」 耳からは「もうあらかた片付いた」という旨の通信が聞こえる。 安堵の溜息をつく。 マイルズ「さて、と‥‥他は‥‥」 当たりを見回す。 遠くの方に逃げる小型ネウロイ少数。その後ろにばかでかい陸戦ユニットが見える。 言っちゃあ悪いけどバケモノだよなぁ‥‥ なんてことを思いながらマイルズは隊のみんなのもとへともどっていった。 663 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 24 12.74 ID ERfrQrjT0 ……… …… … シャーロット「まてー!」 目の前を逃げる、まるで虫のような小型ネウロイを追い回している。 フレデリカ「シャーロット! あまり深追いはダメよ!」 シャーロット「了解!!」 なんて口では言っているが、今は目の前の標的に夢中だ。 先程の返答など、条件反射に過ぎない。 今、シャーロットのその大きい瞳には、目の前を無様に逃げまわる獲物しか映っていない。 ちょこまかと逃げるネウロイにはむやみに弾を打っても当たらない。 ならば、予測を立ててその逃げる先へ弾を送り込む。 そう、マルセイユのやり方を実践すれば良い。 665 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 27 13.15 ID ERfrQrjT0 シャーロット「よーくねらって‥‥」 逃げる先をシュミレートし、狙いを定める。 一目見た限りでは不規則な動きに見えるが、注意してみれば規則的な動きが垣間見える。 シャーロット「ここ!」 放った砲弾は見事ネウロイの胴体の中心を貫き、砂塵を上げながら減速していく。 そのスピードが0になったとき、ネウロイは膨張し、白い破片へと姿を変えた。 シャーロット「やった!」 軽くガッツポーズをし、余韻に浸る。 マティルダ「シャーロット、後ろ!」 急な怒鳴り声に我に帰り、言われたとおりに後ろを振り返ると、 飛行型ネウロイが赤く輝いたところだった。 全ての動きがスローに見える。 頭の中が一つの言葉に支配された。 私は、ここで死ぬ。 隕石 第4話へつづく
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隕石 第3話 俺「ストライクウィッチーズは世界を魅了する」 311- 作者 ID Cs0L3vds0 総レス数 XXX このページでのレス数 XX 311 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 33 08.89 ID hi0b3Wx50 投下開始します Q.これいつになったら盛り上がるの? A.知らん 前回までのあらすじ アフリカに来た謎の男ウィッチはストライカーも銃も持っていなかった。 予備の装備を与えて適正を確かめる圭子達。 見事、お眼鏡にかなった「隕石」と名乗るウィッチ。 リベリオンから来た彼はこの地に何をもたらすのか。 まずは、駆けつけ三杯。 312 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 36 18.53 ID hi0b3Wx50 …… … 古子「うーん今日もいい天気!」 朝日を浴びながら背筋を伸ばす。 筋肉がほぐれるような快感。これだけで身長が何cmか伸びた気がする。 俺「あー、えーっと‥‥ルコ、だよね?」 古子「え? あ、はい」 後ろから声をかけられ振り返ると、先日拾った男ウィッチがそこにいた。 これから先、少しの間かもしれないけど、一緒に戦う仲間だ。仲良くしないと。 古子「おはようございます」 俺「うん、おはよう」 彼もまた起きたばかりのようでまだ日差しが眩しいようだ。 というか本当に12時間寝たのかこの人は。 俺「名前は、ルコであってたよな?」 古子「ええ、北野古子です。みんなからはルコって呼ばれてますね」 俺「なるほど。俺は"俺"だ。よろしく」 そういうと手をさしだしてきた。私はその手を握る。 ‥‥しかし見れば見るほどきれいな人だ。女と言っても通じるんじゃないかな。 313 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 39 29.02 ID hi0b3Wx50 古子「あの時はありがとうございました。 あなたが居なかったらと思うと‥‥」 あの時とはマーケットの時のことだ。 あのままビームを受けていたら私のシールドは破れて‥‥ 俺「いいんだよ。俺の力はそのためにあるんだから‥‥」 そういうと左手のひらをじっと見つめる彼。 なにか、思いつめたような目をしている。 ‥‥過去になにかあったのだろうか。 俺「で、お願いがあるんだけど」 古子「はい?」 そういうと彼は目線をずらす。 俺「化粧水ってないかな?」 古子「え?」 314 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 42 06.61 ID hi0b3Wx50 俺「化粧水。肌に塗る奴」 古子「え、ええ、一応ありますけど‥‥何に使うんですか?」 俺「えーっと‥‥肌に塗るしか思いつかないんだが」 変わった人なんだなと思うのと同時に、だからこの人はこんなに綺麗なんだなとも思った。 なんだか可笑しくなってちょっと笑ってしまった。 俺「あー、やっぱり変か」 古子「いえ! きれいで居たいと思うことは何もおかしくないですよ。 むしろ、せっかくそんなに綺麗なんだからお手入れしないともったいないですよ」 俺「ハハハ、ありがとう」 よくよく肌を見ると本当に綺麗だ。私なんかよりもずっとしっかり手入れしていそう。 古子「じゃあ、待っててくださいね」 ちょっとだけ悔しくなりながら、私は化粧道具を取りにテントへ戻った。 315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 44 52.74 ID baHZ0+GG0 これは古子ルートなの ついに期待しちゃっていいの? チハたんばんじゃーい!なの? 316 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 45 29.03 ID hi0b3Wx50 圭子「あら、朝から一緒なのね」 鏡があったほうがいいということで、結局二人でテントまできた。 古子「おはようございます。ついさっきそこで会いまして。 化粧水を使いたいというんで、いれちゃったんですけど」 圭子「大丈夫よ。もうみんな起きてるし、着替えも済ませてあるわ」 俺「おはよう。じゃ、さっそく鏡貸してくれるか?」 古子「あ、はい。こっちです」 鏡の前へ案内し、化粧水を渡す。 パトリシア「ふーん‥‥本当にきれい」 アビゲイル「本当に男なの?」 俺「いやいや、ここの人たちはお世辞が上手だな」 いつのまにか何人か集まってきていた。やはり珍しいのだろう。 総じて彼の評価は高かった。 ウィッチは総じてかわいい、美しい。 男のウィッチなんて初めて見たが、そっちにも適応されるのだろう。 ‥‥男としてそれはどうなんだろうか。本人はまんざらでもないみたいだが。 317 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 48 07.31 ID hi0b3Wx50 手際よく肌の手入れを済ませる彼。この手つき、慣れているな。 圭子「おしゃれに気を使うなんて、よっぽど女の子ね」 俺「むしろ男だからというか。女の子ならこんな事しなくても綺麗だからね」 そういうと、回りに集まっていたウィッチ達の顔を見回す。 何人か照れている。 フレデリカ「ほんとによくわかってるわね」 シャーロット「お、俺さんも、すごくキレイデス!」 俺「君たちほどじゃないさ。ルコ、ありがとう」 319 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 51 15.53 ID hi0b3Wx50 席を立とうとする彼をパトリシアが抑えつけた。 パトリシア「せっかくなんだし、化粧もしてみない?」 マルセイユ「おもしろそうだな。せっかくだし女装もさせてみるか」 俺「おいおい、マジか?」 なんだか変な展開になってきたぞ? おもしろそうだけど。 男の子のおしゃれは分からないがそれが女装となれば話は別‥‥かも? 古子「やりま――!」 その声をかき消すようにけたたましい音が外から響いた。 「敵襲ーー!!」 第 三 話 頭と銃と盾 320 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 54 28.66 ID hi0b3Wx50 ……… …… … マルセイユ「ったく、面白くなりそうなときに来るなって話だな」 圭子「そうも言ってられないでしょ」 俺「まぁ、また今度ってことで」 俺たち航空ウィッチ達は発着所へ急いでいた。 ライーサ「うーん‥‥女装か‥‥」 隣を走るライーサが走りながらこちらの顔を観ている。 俺「前向いてないと転ぶぞ」 なんて言ったら、ほんとに何かに躓いてバランスを崩したライーサ。 ライーサ「っ!?」 俺「っと!」 俺は咄嗟に手を伸ばし彼女の腕をつかみ、こちら側へ引っ張る。 結果的に抱き合うような形になってしまった。 321 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 12 57 41.45 ID hi0b3Wx50 彼女の驚いた顔が目の前にある。 何があったか理解するのに数秒かかっているようだ。 こう近くでウィッチを見れるというのも男ウィッチの特権だな。 俺「なにも実践しなくてもいいんだぞ」 ライーサ「え、あ、ありがとう‥‥」 目をそらすライーサ。 どうも赤面しているようだ。 マルセイユ「ネウロイは待ってくれないぞ!」 前を走っていたマルセイユが振り返り叫んだ。 俺「その通りだ。走れるな‥‥えーっと、ライーサだよな」 ライーサ「あ、うん、いこう」 表情がもとに戻り、再び足を動かす。 そっと指をほどき、掴んでいた腕を離した。 圭子「役得ね」 俺「あの程度でか?」 圭子「あらあら、言うわねー」 俺「慣れてるからな」 322 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 00 21.31 ID hi0b3Wx50 ……… 俺「さて、俺はどうすればいい」 ストライカーを履き大空へと飛び立った俺達。 安定飛行に入りながら圭子へ尋ねた。 圭子「そうねぇ‥‥」 そういったまましばらく考えこむ。 圭子「それじゃあ私の三番機。兼、真美のサポートに入ってくれるかしら」 俺「‥‥サポート?」 圭子「シールドには自信あるんでしょ?」 なるほど。長所を活かすやり方か。 俺「さしずめ、頭、銃、盾と言ったところか。剣のほうが格好付くかな?」 圭子「いいわねそれ。私たちの小隊の触れ込みはそれで行くわ」 真美「アハハ‥‥」 俺「そうと決まれば、しっかり守ってやるからな」 真美「あ、はい!」 銃は元気よく返事をした。 324 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 04 08.27 ID hi0b3Wx50 俺「あれだな‥‥」 耳からは今しがた見つけたネウロイの情報を、ケイが各部隊へ伝える声が聞こえる。 中型2体に小型10体。それに小型飛行ネウロイ――フライングゴブレットというらしい――が、6体。 なかなかの大部隊だ。だがこちらとて数では引けを取らない。 圭子「じゃあ、いくわよ!」 俺「了解」 真美「了解!」 いよいよ始まる。ここアフリカでの俺の戦いが。 圭子「しっかり守ってね?」 ウインクを飛ばしてくる圭子。一度上がりを迎えている圭子はシールドを貼ることができないはず。 これからは俺が彼女の盾にならないと。 っていうかシールド貼れないで前線に出るってすごいな‥‥ さすがベテラン‥‥もちろん口には出さない。 その後ろで飛ぶ真美も守ってやらねば。実質この三人の中で攻撃できるのは彼女だけだ。 二人を守る。それが俺の任務。 俺「出来る限り、な」 そこまでの実力が俺にあれば、だが。 ‥‥守る。絶対にだ。 325 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 06 11.16 ID hi0b3Wx50 俺を先頭にグングンと地上の中型ネウロイへと近づいていく。 奴らもさすがに気づいたらしく、こちらへ砲塔を構えいつでもビームを撃てるようにしているようだ。 真美「撃ちます!」 有効射程に入ったらしく、真美が叫ぶ。 その声と同時に赤い閃光が飛んで来た。 俺は両腕を交差させ、すこし溜めた後、その腕を目の前へ大きく突き出し魔力を解放する。 すると一秒ほどで俺を中心として、青い魔方陣が前方へ展開された。 その大きさは俺はもちろんの事、後ろを飛ぶ二人も余裕で飲み込むほどの大きさだった。 魔方陣へビームが着弾すると、跳ね返り、散っていく。 そのビームが途切れるのとほぼ同時に、後ろから爆発音が聞こえた。 直後、砲弾とも言える大きさの弾が地上のネウロイへ向かって飛んでいく。 すんでのところでネウロイは回避し、弾は砂を巻き上げる結果だけに留まってしまった。 俺「おしいな」 真美「もう一発‥‥!」 言うと同時に先程の爆発音が聞こえる。 が、ネウロイは素早く俺達の下側へ移動し、死角へと逃げた。 326 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 09 24.66 ID hi0b3Wx50 圭子「一度離脱して、再度仕掛けるわよ」 その声を聞くやいなや俺は減速し、真美たちの後ろへと移動する。 そしてすぐさま反転し、シールドを展開した。 同じように空気へと帰る赤き閃光。 もう一体の中型ネウロイのビームだったようだ。 奴らコンビネーションまで出来るのか? めんどくさい‥‥ まあ今の軌道ならわざわざ俺が守るまでもなく外れていたと思うが‥‥ 俺「さっさとどっちか壊さないと面倒だな」 圭子「そうね。地上部隊は小物を相手してるし、私たちで奴らを惹きつけないと」 マルセイユ「惹きつけるならまかせろ」 そう聞こえた途端、二人のウィッチが中型ネウロイへ突撃するのが見えた。 圭子「まるで一等星並の目立ちたがりやね」 俺「一等星は一つじゃないってことを教えてやろうぜ」 反転してきた真美へと言葉を掛ける。 真美「が、がんばります!」 329 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 13 21.90 ID hi0b3Wx50 ……… …… … マイルズ「マイルズ隊砲撃開始!」 号令と共に攻撃を開始するマイルズ達。 それと同時にパットンガールズやシャーロット達も攻撃を開始する。 古子も目標へ向けて、前進する。 目標は目の前に迫る黒き集団。 小さいが、こんな奴らでも人類を脅かす脅威だ。 容赦なんてしない。 古子「あったれー!」 目の前に迫る小型のネウロイ一体に狙いを定めトリガーを引く。 飛んでいく弾はネウロイをかすめ、消えていった。 古子「ちっ!」 330 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 14 01.77 ID baHZ0+GG0 わーい、チハたんの三八式ェ・・・ 331 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 15 18.01 ID hi0b3Wx50 マリリン「もっとしっかり狙いなさいな! こんなふうに‥‥ね!」 後ろから声が聞こえた。 その言葉と同時に発射された弾はまたもネウロイをかすめた。 古子「‥‥」 マリリン「‥‥」 古子「‥‥」 二人とも静かに銃を構え直す。 マリリン「‥‥すばしっこいわ、ね」 古子「そうです、ね!」 二人から同時に発射された弾は、それぞれネウロイの胴体へ当たる。 その威力はネウロイを無力化するのには十分だった。 332 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/03(木) 13 18 23.86 ID hi0b3Wx50 古子「ふう‥‥」 額から頬を通り、顎まで滴る。 ここは熱い。 マリリン「安心してる暇はないわよ! 次行きましょう!」 シャーロット「伏せて!」 次の瞬間、頭の上で爆発音が響いた。 二人は咄嗟に頭を抱え地面に突っ伏したかったが、一歩遅かったようだ。耳がキンキンしている。 シャーロット「あぶなかった‥‥」 飛び出そうになった心臓の音を聞きながら爆発した方を見ると、ネウロイの破片が降っていた。 どうやら飛行杯がすぐ近くまで来ていたようで、それをシャーロットが狙い撃ちしたらしい。 古子「あ、ありがとうシャーロット。助かったわ」 シャーロット「さっさと退治して帰りましょー!」 マリリン「同感ね!」 元気だなあ。でもこんな感じでないと気圧されちゃうもんね。 古子「よーし! がんばるぞー!」 そう言いながらまずは右足を一歩、前へと踏み出した。 333 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/03(木) 13 18 32.45 ID hq1T2ldoO そうだなーすばしっこいなら仕方ないなー(棒読み) …支援 640 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 33 14.97 ID ERfrQrjT0 ……… …… … 先ほどと同じように突撃をかける俺達。 今度はこちらへビームを撃ってくる暇はなさそうだ。 そのかわり、さっきより動きが激しいので狙いを定めづらいようだが。 真美「‥‥撃ちます!」 弾丸が飛ぶ。が、激しく動くネウロイには当たらず、砂を巻き上げるばかりだ。 俺「もっと近づかないとダメか」 そう言うと真美の頭から生える猫の耳がしょんぼりとしおれる。 俺「なぁに。そう簡単に撃破されちゃ、みんなの仕事がなくなっちゃうだろ」 真美「でも‥‥」 俺「マルセイユも言ってたぞ、"当たる地点まで近づいて撃てばいいだけ"ってな」 圭子「そこまで近づければの話だけどね」 642 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 36 09.22 ID ERfrQrjT0 割って入ってきたケイの言葉を聞き、鼻で笑い飛ばす。 俺「何のために俺がいるんだ?」 そういうと苦笑いを浮かべるケイ。 圭子「強引ね」 俺「強引な男は嫌いか?」 今度はケイのほうが鼻で笑う。 圭子「嫌いじゃないわ。ね、真美」 真美「うえぇ!?」 急に話を振られ萎えていた耳をピンと立たせた。 撫でたい。 俺「真美の恋愛論は後のお楽しみだ。一気に行くぞ!」 そういうと俺はシールドを展開し、スピードを上げた。 圭子「もう少し角度をつけて。横っ腹から撃ちぬきましょう」 俺「了解! しっかり付いて来いよ!」 真美「は、はい!」 643 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 39 20.39 ID ERfrQrjT0 先程より下へ角度をつけ地面へ近づく。 まるで墜落してるみたいだ。 ‥‥嫌なことを考えてしまった。 圭子「今よ!」 その声を聞き、体を起こす。 俺達の向かう方向が茶色い地面からネウロイの方へと変わるが、スピードは変わらない。 奴もこちらへ気づいたようだ。砲塔をこちらへ向けビームをチャージし始めている。 俺「マルセイユ! ライーサ! ちょっと離れてろ!」 マルセイユ「言われなくともっ!」 そういうと彼女たちは上空へと飛び上がった。 これで心置きなく銃を撃てる。 俺「真美! シールドは任せて、お前はありったけぶち込め!」 真美「了解! 行きます!!」 シールドの展開。ビームの発射。40mmの発射。 それがほぼ同時に起きた。 645 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 42 41.74 ID ERfrQrjT0 中型ネウロイがすっぽり入りそうな大きさのシールドに、ビームはかき消されていく。 正面からの攻撃に対してはほぼ無敵だ。 連続して砲弾が飛んでいく。 一発目はビームに迎撃された。が、すぐに二発目、三発目が飛んでいく。 真美「倒れろぉお!」 5発目に放った弾がネウロイの胴体に直撃した。続けて6、7、8、9と続けて弾丸が直撃する。 その衝撃は大きく、ネウロイは後ろへ吹き飛ぶ。その先にはもう一体の中型ネウロイがいた。 真美「よし!」 どうやらマルセイユたちがその場へ追いやっていたようだ。さすがというべきか。 それともこれもケイの作戦か? 俺「仕上げ!」 俺達は急上昇し、上空から身動きが取れなくなったネウロイへと狙いを定める。 見ると、マルセイユやライーサも丁度銃を構えたところだった。 チェックメイト 俺「詰みだ!」 吹き飛び転げたネウロイ達へ銃弾が降り注いだ。 俺も一応撃ったけど‥‥まあ、無いよりはマシ‥‥だったか? 弾の無駄遣いと言われたら終わりかもしれんが。 中型二体のネウロイのコアは鉛の雨で流され、砂へと帰っていった。 646 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 45 57.81 ID ERfrQrjT0 ……… …… … ネウロイの数もだんだんと少なくなってきた。 パトリシア「もってけー!」 嬉しそうな叫びと同時に砲弾が3発ネウロイへと叩き込まれる。 中型ならば体制を崩す程度だったかもしれないが、 小型ならばそうもいかない。 その勢いに足が耐えられないようで、大きくその体を宙へ浮かせた。 アビゲイル「もらった!」 その宙へ浮く的へめがけ、砲弾を放つ。 先程よりも大きな衝撃によって、その体は大きく飛ばされ、 地面に着地する前に、バラバラに吹き飛んだ。 パトリシア「ビューリホー!」 アビゲイル「イェス!」 マリリン「さあさあ次よ!」 647 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/04(金) 11 48 39.47 ID BuAONdJt0 いつの間にパトリシアはスコットランド人の大尉になったwww 648 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 48 42.82 ID ERfrQrjT0 と、残ったネウロイの方を向くと、なにやら小型ネウロイが集まってきている。 マリリン「逃げる算段でも立ててるのかしらー?」 パトリシア「遺言はすんだかし――」 瞬間集まったネウロイが凄まじい跳躍を見せた。 そしてみるみるうちにネウロイがネウロイの上に着地、さらにその上に‥‥ といった具合にネウロイタワー(仮)が完成した。 パトリシア「な‥‥」 「「なんじゃそりゃー!」」 三人はおもいっきり叫んだ。 もちろん答えは帰って来なかった。 649 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 51 29.08 ID ERfrQrjT0 古子「みなさん無事ですか!」 後ろから古子が走ってきた。 パトリシア「あ、ルコ。一体誰の心配してるのよ」 アビゲイル「あなたこそ大丈夫?」 古子「ええ、なんとか。それであれは一体?」 マリリン「さあ‥‥」 視線を戻すとネウロイタワー(仮)はなんだかぐらついている。 数えるとその数5体。一番下に一回り大きいネウロイが、 その上に4体、下から東西南北へ砲塔が向いている。 そのうちグラつきが収まり、こちら側の砲塔が4人の方へ向いた。 パトリシア「くるわ! 散開!」 ネウロイ製の弾が着弾した地点にはもう4人は居なかった。 650 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/04(金) 11 52 33.48 ID BuAONdJt0 ついにネウロイさんも合体か・・・ 胸熱 651 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 54 46.38 ID ERfrQrjT0 マリリン「なんだか知らないけどお遊びもここまでよ!」 照準をネウロイタワー(仮)のほうへ向けるマリリン。 砲撃がすんだ後には必ず隙ができる。そこへぶち込めば―― マリリン「なっ――!」 こちらがトリガーを握るよりも前に、目の前に弾が迫る。 咄嗟にシールドを展開し防ぐが、バランスを崩して転倒してしまった。 マリリン「あたた‥‥」 パトリシア「マリリンしっかり!」 走ってきたパトリシアの手を取り、立ち上がる。 パトリシア「あいつらあんななりだけど全方位に砲撃できるし、 本命とは逆の方向に撃って反動軽減までしてるわ」 マリリン「ふざけてるわね」 すぐさま移動を開始。ちょうどマリリンの尻餅の後に砲弾が直撃し、 形の良い跡は消え去ってしまった。 652 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 11 57 37.37 ID ERfrQrjT0 ネウロイタワー(仮)を挟んでパトリシアとマリリンのちょうど反対側。 アビゲイル「ちょっとルコ大丈夫!?」 古子「は、はい! なんと――かぁ!?」 後ろに閃光と轟音を浴びながら走る。走る。走る。 ネウロイタワー(仮)を中心に円形に走る。走る。走る。 さっきから休む暇もなく爆発音がそこらじゅうから聞こえる。 なんとか攻撃を試みようとネウロイタワー(仮)の方に銃口を向けるが、 砲撃が続いているため走り続けなければならず、 一番下のネウロイがまるでカニのように素早い動きで移動している為、狙いが定められない。 アビゲイル「埒があかないわ! ルコ、いい話があるんだけど」 古子「な、なんですか!?」 アビゲイル「二手に分かれて逃げましょう! 」 古子「‥‥囮ってことですか?」 アビゲイル「そうとも言うわね」 古子「このままこけて撃たれるよりマシです!」 アビゲイル「そうね! じゃあ1、2の3で分かれるわよ! 1、2の3!」 653 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 00 36.37 ID ERfrQrjT0 掛け声と共にアビゲイルと古子はそれぞれ逆方向に走りだす。 アビゲイル「ちくしょー! こっちかー!」 砲撃はアビゲイルを追い続けた。 古子「こっちにも来てるじゃないですかー!」 古子の後にも砲撃が続いていた。いままで2門の砲撃が続いていたが、 それが1門づつに変わっただけのようだ。 古子「なにか‥‥なにか‥‥!」 古子は走りながらあたりを見回す。 どこまでも続きそうな砂。無骨にそびえ立つ岩。突き抜けるような青をした空。 砲撃を続けるネウロイタワー(仮)。そしてその回りを逃げ惑うパットンガールズ。 古子「そうだ!」 アビゲイル「あっ! ルコめ、岩場に隠れようっていうのね!?」 岩場の裏側の方へ走っていく古子。 ‥‥つまりネウロイタワー(仮)の標的がひとつ減るということ。 アビゲイル「お、覚えてなさいルコォ!」 砲弾の数が2倍に増えた。 そもそもこの作戦を提案したのはアビゲイルさんですよ、とは戦闘終了後の帰り道に聞くことができる。 654 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 04 13.02 ID ERfrQrjT0 マリリン「くっ‥‥あたらないわ」 逃げながらも何発か弾を撃ったが当たらない。 ただでさえブレブレの照準なのに、相手が動いていてはマルセイユぐらいでないと無理だろう。 パトリシア「まあそのうちマイルズ隊がっ!‥‥なんとかしてくれるでっ!‥‥しょっ!」 攻撃を避けながら投げやりな会話を続ける。 そのうち奴の回りをぐるっと回って正面からアビゲイルが走ってきた。 マリリン「あ、あれ? ルコは?」 アビゲイル「逃げたわ!」 パトリシア「なにそれ!」 なんて会話している場合ではない。 このままでは交差して走り抜けた瞬間、相手側の後ろから迫る砲弾にクリーンヒットしてしまう。 じゃあどこへ逃げる? 前と後ろはアウト。じゃあ右?左?上?下? そうこうしてるうちにもどんどんと2組の距離は近づいていく。 そこにもう一組、近づく影があった。 その影はパトリシア、マリリン、アビゲイルの頭上を超えて行った。 655 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 06 10.76 ID ERfrQrjT0 三人とも視界の端にその上空の影を捉えたようで、顔をそちらへ向ける。 "それ"はけたたましいエンジン音を発しながら、岩から発射された。 太陽を隠すその姿は人型で、銃を持ち、陸戦用ストライカーを履いていた。 見覚えがある影。 三人の口は少しづつひらきはじめ、一斉に同じ単語を発した。 「「「ルコォ!?」」」 頭上を飛ぶその人を驚愕の表情で目で、いや首で追う三人。 古子「いい加減に――!」 すさまじい勢いで発射された古子はネウロイタワー(仮)の頂点まで飛んでいくと、 一番上のネウロイをおもいっきり―― 古子「しなさーい!」 蹴っ飛ばした。 勢いのついた一撃を浴びたネウロイは、吹き飛んで砂地へ落下し、横転、動かなくなった。 一番上のいなくなったネウロイタワー(仮)の一番上に古子は器用に着地すると、 間髪入れずに銃剣を下のネウロイへ突き刺し、トリガーを引いた。 古子「おりゃぁぁぁあああああ!!」 ものすごい音共にネウロイタワー(仮)を貫通していく銃弾達。 それはネウロイタワー(仮)の動きを止めるのには十分すぎる量だった。 656 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 10 08.48 ID ERfrQrjT0 古子はトリガーにかけた指を緩めた。 銃からの音が途絶える。 すぐさま銃の先についた剣を折り、自由を取り戻す。 古子「とう!」 古子はネウロイタワー(仮)から飛び降りた。 その足元に手榴弾を落として。 一瞬の静寂。 直後黒い塔は盛大に爆発した。 宙へ浮く古子はその光を浴び、影をかぶる。 その姿は爆発の激しい光とのコントラストで、すごく絵になっていた。 一部始終を呆然と見ていた三人は慌てて、着地した古子のもとへと走った。 マリリン「ワンダホー! ファンタスティーック!!」 パトリシア「だ、大丈夫!?」 アビゲイル「すごい事するわね!」 古子「エヘヘ‥‥なんとかなりました」 その顔は今しがた大立ち回りした少女の顔とはとても思えなかった。 657 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2011/02/04(金) 12 11 06.34 ID BuAONdJt0 やめてチハたん凹んじゃう>< 658 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 12 31.26 ID ERfrQrjT0 ……… …… … 一段落といったように、俺達はケイの元へと向かっていた。 俺「やったな真美」 真美「俺さんのシールドのおかげですよ」 俺「いくらシールドがすごかったとしても、攻撃できないんじゃ意味ないけどな。 えーっと扶桑ではなんて言ったかな‥‥」 真美「‥‥攻撃は最大の防御ですか?」 俺「ああそうそうそれそれ。って今にして思えば真美は言葉は結構話せるんだっけか」 真美「一応ブリタニア、カールスラント、ローマ語はしゃべれますよ。 そういう俺さんだっていろいろ話せるみたいですけど」 俺「まあ‥‥人生何があるかわからないもんだからな」 溜息と共に遠くを見つめる俺。 思えば遠くまで来たもんだ‥‥ 659 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 15 30.64 ID ERfrQrjT0 圭子「二人とも無事?」 合流すると同時に定型文を投げかけてくるケイ。 真美「俺さんのおかげでなんとか」 圭子「そう。いい盾だったみたいね」 俺「賞賛は決着がついてからでも遅くはないぞ」 圭子「そうね。残った奴らの掃除にいきましょう」 俺「とは言っても、それはあっちのほうが得意そうだがな」 今の戦闘を省みる限り、中~大型なら俺たちのほうが得意そうだが、 小型が数で押してくるならマルセイユ達のほうが、武装やらなにやらで有利だろう。 圭子「あなただって同じような装備なんだから頑張りなさいな」 俺「軽く言ってくれるな。じゃあ俺は向こうに合流するぞ」 そんな小言を口にしながら俺はマルセイユ達の方へ飛んでいった。 660 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 18 18.05 ID ERfrQrjT0 俺「おいマルセイユ。俺だ。まだ敵は残ってるか?」 マルセイユ「ああ、まだ少し残ってるぞ」 先程の中型を倒した後、さっさと小型掃討に向かったマルセイユ達に合流した。 マルセイユ「もっとも、もうすぐなくなるがな」 俺「それは困る。せっかくの活きのいい練習台なんだ」 マルセイユ「自分の実力で勝ちとってみせるんだな」 俺「言われなくとも!」 魔力を込め、スピードをあげる。 ライーサ「すごいやる気ですこと‥‥」 662 名前:隕石 [sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 21 20.24 ID ERfrQrjT0 ……… …… … 連続する銃撃音と共に空を裂く銃弾は、飛行する黒い異形を撃ちぬいた。 マイルズ「飛行杯一機撃破! 後は!?」 耳からは「もうあらかた片付いた」という旨の通信が聞こえる。 安堵の溜息をつく。 マイルズ「さて、と‥‥他は‥‥」 当たりを見回す。 遠くの方に逃げる小型ネウロイ少数。その後ろにばかでかい陸戦ユニットが見える。 言っちゃあ悪いけどバケモノだよなぁ‥‥ なんてことを思いながらマイルズは隊のみんなのもとへともどっていった。 663 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 24 12.74 ID ERfrQrjT0 ……… …… … シャーロット「まてー!」 目の前を逃げる、まるで虫のような小型ネウロイを追い回している。 フレデリカ「シャーロット! あまり深追いはダメよ!」 シャーロット「了解!!」 なんて口では言っているが、今は目の前の標的に夢中だ。 先程の返答など、条件反射に過ぎない。 今、シャーロットのその大きい瞳には、目の前を無様に逃げまわる獲物しか映っていない。 ちょこまかと逃げるネウロイにはむやみに弾を打っても当たらない。 ならば、予測を立ててその逃げる先へ弾を送り込む。 そう、マルセイユのやり方を実践すれば良い。 665 名前:隕石[sage] 投稿日:2011/02/04(金) 12 27 13.15 ID ERfrQrjT0 シャーロット「よーくねらって‥‥」 逃げる先をシュミレートし、狙いを定める。 一目見た限りでは不規則な動きに見えるが、注意してみれば規則的な動きが垣間見える。 シャーロット「ここ!」 放った砲弾は見事ネウロイの胴体の中心を貫き、砂塵を上げながら減速していく。 そのスピードが0になったとき、ネウロイは膨張し、白い破片へと姿を変えた。 シャーロット「やった!」 軽くガッツポーズをし、余韻に浸る。 マティルダ「シャーロット、後ろ!」 急な怒鳴り声に我に帰り、言われたとおりに後ろを振り返ると、 飛行型ネウロイが赤く輝いたところだった。 全ての動きがスローに見える。 頭の中が一つの言葉に支配された。 私は、ここで死ぬ。 隕石 第4話へつづく
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シュヴァルツェスマーケン・えくすとら♪ 第3話「テオドール争奪・料理対決!!」(後半) 4.カティアとキルケ、ベアトリクスの料理 「ったく、どいつもこいつも情けねえ奴らなぁ。テオドールの事を少しも満足させられてねえじゃねえかよ。」 先程から腹を空かせたままのテオドールの泣きそうな表情を見て、ヨアヒムは呆れた表情で溜め息をついたのだった。 試合開始から既に15分が経過したのだが、先攻したアイリスディーナ、アネット、ファムのいずれの料理もテオドールを満足させるには至っていない。 プロの料理人に作らせた高級料理を、勿体無いという理由で拒絶されたアイリスディーナ。 高たんぱく質、高脂質のマンガ肉を炭水化物不足で拒絶されたアネット。 名状しがたい何かを入れたせいで米麺を拒絶されたファム。 彼女たち3人が無様に敗北する姿を、先程からリィズが物凄い笑顔で見下していたのだが。 「・・・次は私の番のようですね。」 そんな3人の姿を目の当たりにしてもなお、自信に満ち溢れた表情を崩さないカティアが、テオドールに料理を差し出してきた。 皿の上に綺麗に並べられたカティアの料理・・・それは・・・。 「アネットさんもファム先輩も、料理のインパクトに拘り過ぎなんですよ。やっぱり料理というのは質素で素朴な物が一番です。」 「・・・こ・・・これは・・・!?」 「スタッフド・ピーマンです。さあテオドールさん、どうぞ召し上がれ♪」 一般家庭でも普通に食されている、極々普通の家庭料理・・・ピーマンの肉詰めだった。 真っ二つに両断された鮮やかな緑色のピーマンに、丸め込まれた鶏の挽肉がしっかりと詰め込まれ、蒸し焼きにされた事で肉汁がピーマンの中から逃げずにしっかりと閉じこもっている。 タレも市販の物ではなく、ケチャップと醤油をベースにしたカティアの手作りの代物のようだ。さらに味のアクセントとして、ゴマ油とブラックペッパーも使われている。 まさしく完璧なピーマンの肉詰め・・・適度に焼かれた挽肉から漂う香りが、テオドールの食欲を刺激したのだが・・・。 「・・・た・・・食べられない・・・っ・・・!!」 「え!?」 目から涙を流しながら、テオドールはピーマンの肉詰めを一口も食べる事無く、ナイフとフォークをテーブルの上に置いたのだった。 その予想外の事態に、戸惑いを隠せないカティア。 「そんな、一体どうしてなんですか!?テオドールさん!?」 自分の調理にミスは無かったはず。自分でも自画自賛してしまう程の、テオドールへの愛情をたっぷりと込めた、最高のピーマンの肉詰めが出来たはずなのに。 「・・・ふふふ・・・ふふふふふ・・・あはははははははははははは!!」 「な・・・リィズさん!?」 だがその様子をフライパンでハンバーグを焼きながら物凄い笑顔で見つめていたリィズが、初めからこうなると分かっていたと言わんばかりに、誰もが予想もしなかったとんでもない理由を語ったのだった。 「残念だったわねカティアちゃん・・・お兄ちゃんはね、ピーマンが大の苦手なのよ!!」 「はああああああああああああああああああああああああああ!?」 あまりにしょーもない理由に、カティアは口をポカーンと開けて唖然としてしまう。 そして涙を流しながら、テオドールはピーマンの肉詰めを激しく拒絶したのだった・・・。 「この料理対決で勝負を決めるのは、お兄ちゃんを満足させる事・・・どれだけ最高のスタッフド・ピーマンを作ろうが、それでお兄ちゃんを満足させられなければ何の意味も無いわ。」 「くっ・・・!!」 「スタッフド・ピーマンというメニューを選択した時点で、既にカティアちゃんの敗北は決まっていたのよ!!あはははははははははは!!」 物凄い笑顔で高笑いするリィズを見て、カティアはとても悔しそうな表情を見せる。 「テオドールさん、もう高校生にもなって何子供みたいな事言ってるんですか!?」 「嫌だああああああああ!!ピーマンだけは絶対に嫌だあああああああああああ(泣)!!」 「好き嫌いは駄目ですよテオドールさん!!ほら口を開けて下さい!!」 そう言ってカティアはフォークをピーマンの肉詰めにぶっ刺し、無理矢理テオドールに食べさせようとする。 「はい、テオドールさん、あーん(激怒)!!」 「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だあああああああああああああああああ(泣)!!」 こんなはい、あーんは嫌だ・・・。 カティアの両手首を掴んで必死に抵抗するテオドールだったのだが、そこへキルケが自信に満ちた笑顔で、颯爽とテオドールの前に立ちはだかったのだった。 「全くカティアちゃんったら、テオドール君が嫌いな物を無理矢理食べさせようとするなんて、幾ら何でも酷過ぎるにも程があるわ。」 「な・・・キルケさん!?」 「さすがにこのメニューなら、食べられない人なんてそうそういないと私は思うのだけれど?」 キルケがテオドールに提供したのは・・・これまたカティアのピーマンの肉詰めと同様の、極々普通の家庭料理・・・オムライスだった。 焦げ目1つ無い完璧な焼き加減の、色鮮やかな黄金色のふわふわの玉子も見事だが、何よりも特徴的なのは一般的なチキンライスではなく、ドライカレーを使用しているという点だ。 ふわふわの玉子の甘みとドライカレーのピリ辛が、口の中で絶妙にマッチするのは間違いない。 そのドライカレーから放たれる香ばしい香りが、今にも腹ペコで死にそうなテオドールの食欲を刺激する。 そしてオムライスにはケチャップで、可愛らしい猫のイラストが無駄に器用に描かれていたのだが。・・・ 「さあテオドール君、どうぞ召し上が・・・」 「・・・た・・・食べられない・・・っ!!」 「・・・え!?」 涙を流しながらテオドールは、スプーンをテーブルの上に置いたのだった・・・。 予想外の出来事に、キルケは戸惑いを隠せない。 「幾ら何でも酷過ぎるぞキルケ・・・!!これを食べるなんて残酷な事、俺に出来るわけねえじゃねえかよおおおおおおおおおおおおおっ(泣)!!」 「残酷って、一体何を訳の分からない事を言ってるのよ!?」 テオドールの言っている事が全くもって理解出来ない。このオムライスを食べる事の一体どこに『残酷』な要素が含まれているというのか。 テオドールが嫌いなピーマンは全く使っていないし、全く調理ミスが無い完璧なオムライスを作ったはずだ。 だがその様子を皿にご飯を盛りつけながら見ていたリィズが、まるで初めからこうなると分かっていたと言わんばかりに、物凄い笑顔でキルケに真相を語ったのだった・・・。 「残念だったわねキルケ。お兄ちゃんはね・・・大の猫好きなのよ!!」 「はああああああああああああああああああああああああああ!?」 ケチャップでオムライスに無駄に器用に描かれていたのは、とても可愛らしい猫のイラストだ。 それ故に猫好きのテオドールには、どうしてもこれを食べる事に抵抗を感じてしまうという訳だ。 このオムライスにスプーンをぶっ刺すという事は、この可愛らしい猫のイラストをぐちゃぐちゃに崩してしまう事を意味するのだから。 「ちょ、猫好きって・・・えええええええええええええええええええええ!?」 「確かに貴方のオムライスは見事な代物だったわ。だけどオムライスに猫のイラストを描いた時点で、既に貴方の敗北は決まっていたのよ!!あはははははははは!!」 「そんな馬鹿なああああああああああああああああああああああああっ!!」 その場に崩れ落ちるキルケを尻目に、今度はベアトリクスが威風堂々とテオドールの前に立ちはだかったのだった。 だが何故かベアトリクスは、その手に何も料理を手にしていない。 とても妖艶な笑みを浮かべながら、今にも腹ペコで死にそうなテオドールを見つめている。 「全く、どいつもこいつも情けないにも程があるわね。料理という物の本質をまるで分かっていない連中ばかりで笑ってしまうわ。」 「ちょっとベアトリクス先輩、料理の本質って、先輩は何も作ってないじゃないですか!!」 そう・・・リィズの言う通り、ベアトリクスは先程から全く料理を作っていないのだ。 ただ威風堂々とドヤ顔で、テオドールたちが騒ぐ光景を見つめていただけだ。 アイリスディーナのようにプロの料理人に作らせるという訳でもない。それ所か彼女のテーブルには食材自体が用意されていなかったのだ。 それなのに一体何をテオドールに提供しようというのか。 「貴方達は何も分かっていないみたいね。そもそも男の子が本当に喜ぶ物が一体何なのかを。何を提供すれば喜んで貰えるのかを。」 「何ですって・・・!?」 「うふふふふ・・・。」 だがベアトリクスがテオドールに『提供』しようとした物・・・それは誰もが予想もしなかったとんでもない代物だった・・・。 「・・・ねえ、テオドール・・・。」 「な・・・何すか?ベアトリクス先輩・・・。」 「・・・私を、食・べ・て♪」 突然ベアトリクスはエプロンを脱ぎ捨てて制服のボタンを外し、テオドールの右手を自らの豊満な胸に当てたのだった。 柔らかくて温かいベアトリクスの胸の感触が、ダイレクトにテオドールの右手に伝わってくる。 「あ、えあ、あ、おうお、あ、はいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」 いきなりの出来事にテオドールは頭の中が真っ白になり、興奮のあまり目をグルグルさせてしまったのだった。 「ちょっとベアトリクス先輩!!お兄ちゃんに何やってるんですかあああああああああああ!?」 「この間買った少女漫画に載っていたのよ。こうすれば男の子は最高に喜んで貰えるってね。」 「はああああああああああああああああああああああああ!?」 「貴方も言っていたように、この料理対決の本質はテオドールをどれだけ満足させられるかが鍵になるわ。これで満足しない男の子なんて、アスクマンのような余程の変態でも無い限り、そうそういないと思うのだけれど?」 「いや満足も何も、最早料理対決ですら無いわあああああああああああああああああっ!!」 鍋の中身を味見しながら文句を言うリィズを完全に無視し、テオドールの右手をしっかりと掴んで自らの豊満な胸から決して逃がさないベアトリクスだったのだが。 何故なのだろう。こうしてテオドールに胸を触られると、何だかとても胸が高まってくる。とても愛おしい気持ちになってくる。 今までシュター部の男性部員たちに面白半分で胸を触らせて、からかってみた事があったのだが、それでもこんな気持ちになった事は今まで一度も無かったというのに。 (・・・そ、そんな、駄目よ、私にはユルゲンという心に決めた人が・・・そ、それなのに・・・っ!!) 「ベアトリクス先輩、もう勘弁して下さいよおおおおおおおおおおお(泣)!!」 (な、何なのよこれ・・・!?何だか彼の事がとても愛おしく思えてくる・・・!!こんな・・・こんなのって・・・!!) 先程までテオドールを見下した態度を取っていたベアトリクスだったのだが、いつの間にか完全にテオドールに対して慈愛の表情を見せるようになってしまっていた。 うるうるした瞳で右手を離してくれと懇願するテオドールの表情、そして自分の胸を触るテオドールの右手の感触が、どんどん愛おしく感じられてしまう。 もっと私に触れて欲しい、もっと私を感じて欲しい、もっと、もっと、もっと・・・もっと!! (し、信じられない・・・これが・・・これが恋愛原子核の力だというの!?) 「・・・おい、ベアトリクス。ちょっといいか?」 だがそこへ物凄い表情のアイリスディーナがベアトリクスの右手を掴み、そのままズルズルとベアトリクスを教室の外へと連行してしまったのだった。 「ちょっとアイリス、何するのよぉっ!?」 「いや、今後の事について、ちょっとお前と話し合う必要が出たと思ってな。」 「ああん、そんな、ちょっと待って、テオドールううううううううううう!!」 「・・・この浮気者が。」 「嫌ああああああああああああああああああああ!!」 アイリスディーナに無様に引きずられながら、必死にテオドールに手を伸ばす情けないベアトリクスの醜態を、リィズたちが唖然とした表情で見つめていたのだった・・・。 5.リィズとアスクマンの料理 「・・・ま、まあ、羨まし・・・あ、いや、とんでもない出来事があった訳だが・・・これでまだテオドールに料理を出してないのはリィズとアスクマンだけだな。制限時間は残り10分を切った訳だが・・・。」 馬鹿が・・・!!無様に敗北したアイリスディーナたちを嘲笑うかのような物凄い笑顔で、ヨアヒムの言葉と同時にリィズが颯爽とテオドールの前に立ちはだかったのだった。 未だベアトリクスの胸の感触の余韻に浸ってしまっているテオドールだったのだが・・・リィズが提供した料理の香りを嗅いだ瞬間、その余韻が一気に吹き飛ばされてしまう。 「やれやれ、お兄ちゃんを満足させられるのは、やっぱりこの私しかいないみたいね。」 「こ・・・これは・・・この料理は!!」 「さあお兄ちゃん、どうぞ召し上がれ♪」 リィズがテオドールに提供したのは・・・何の変哲も無い、ただのハンバーグカレーだった。 米も、ルーも、野菜も、ハンバーグに使われている牛の挽肉も、その全てがその辺のスーパーで安売りされている、極々普通の素材ばかりだ。 アイリスディーナが作らせた高級肉料理や、カティアやキルケの料理のように、調理方法に工夫を凝らしてる訳でもない。かと言ってアネットやファムの料理のように奇抜な料理という訳でもない・・・本当に極々普通のハンバーグカレーだ。 「何よこれ、ただのハンバーグカレーじゃない。私のオムライスでさえもテオドール君を満足させられなかったってのに・・・。」 「・・・ふふふ。」 「リィズちゃん貴方、一体どういうつもりなのかしら?」 キルケは一目見ただけで判断した。これならば自分の作ったオムライスの方が余程マシな料理だと。 鍋の中に残ったルーを、右手人差し指で掬い取って一口舐めてみたのだが、本当にただの平凡な辛口のルーだ。自分のオムライスと違い、調理方法や隠し味に何か工夫を凝らしてる訳でもない。 それでもドヤ顔を崩さないリィズを見て、怪訝な表情を見せるキルケだったのだが。 「・・・うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお(感涙)!!」 だが次の瞬間・・・テオドールが先程まてと違い、物凄く歓喜に満ちた表情で、ハンバーグカレーを物凄い勢いで口の中に放り込んだのだった。 「「「「「何いいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」」」」」 「美味い美味い美味い美味い美味い美味い美味い!!」 涙目になりながら、とても満足そうにハンバーグカレーを食べるテオドールの姿に、驚きを隠せないアイリスディーナたち。 一体これはどういう事なのか・・・今テオドールが口にしているのは、本当に何の変哲も無い、ただのハンバーグカレーのはずだ。 だがその様子を自信満々の確信に満ちた笑顔で見つめていたリィズが、アイリスディーナたちを嘲笑うかのように、威風堂々とその真相をはっきりと告げたのだった。 「残念だったわね皆。お兄ちゃんはね・・・カレーが大の好物なのよ!!」 「「「「「・・・はあああああああああああああああああああああ!?」」」」」 誰もが予想しなかった、まさかの単純明快なリィズの回答に、アイリスディーナたちは戸惑いを隠せない。 そんなアイリスディーナたちを尻目に、テオドールはとても満足そうにハンバーグカレーを食べ続けている。 先程リィズも言っていたが、この料理対決で勝敗を決するのは、料理の味でも工夫でもない・・・『どれだけテオドールを満足させられるか』だ。 つまりテオドールを一番満足させられれば、極端な話、味などどうでもいい・・・要はテオドールの一番の好物を出せば済むだけの話なのだ。 リィズは幼少時からテオドールと一緒に暮らし、常にテオドールの事を見続けていたので、テオドールがカレーの辛口が大好物だという事を完璧に把握していた。 それ故に今回の料理対決は、テオドールの好みを知り尽くしているリィズが、最初から圧倒的に有利だったのだ。だからこそ他の者がどんな料理を出そうが、リィズは余裕の笑みを崩さなかったという訳だ。 「・・・ふう、美味かったぜ・・・ごちそうさん、リィズ。」 「えへへ、お粗末さま。お兄ちゃん。」 そうこうしてる間にテオドールは、あっという間にハンバーグカレーを完食してしまった。 アイリスディーナたちの時とは違い、テオドールはとても満ち足りた表情をしている。 それは今回の料理対決で、リィズが圧倒的に優位に立った証だ。 「・・・お兄ちゃんの大嫌いなピーマンもハンバーグの中にこっそり入れたんだけど、全然気付かなかったでしょ?」 「え!?マジかよ!?」 とても自信満々な笑顔でそう告げるリィズに、テオドールは驚きを隠せずにいた。 自分が食べたハンバーグからは、ピーマンの独特の苦味など全く感じなかったからだ。 リィズに真相を明かされても尚、テオドールは信じられないといった表情をしている。 「カティアちゃんったらお兄ちゃんが食べられないって言ってるのに、無理矢理ピーマンを食べさせようとするんだもの。全く何考えてるんだか。」 「ぐぬぬぬぬ・・・!!」 「これで今回の料理対決の勝者は私に決まったも同然よね。ほら見なさいよ、私のカレーを食べたお兄ちゃんの、この満足そうな笑顔・・・アンタたちには悪いけど、明日お兄ちゃんとデートするのはこの私よ。」 明日のデートの光景を頭の中で想像し、気持ちを高ぶらせていくリィズ。 明日は2人で一緒に映画を観て、洒落たカフェで昼食を食べて、その後遊園地にでも遊びに行って、観覧車の中で2人きりになって・・・そして・・・ 『・・・リィズ・・・俺はお前の事が好きだ・・・ずっと前からお前の事が好きだったんだ。』 『お兄ちゃん・・・嬉しい・・・!!』 『俺は今からテオドール・ホーエンシュタインに改名する!!だから俺と結婚してくれ!!』 『お兄ちゃああああああああああん!!』 『うおおおおおおおおおおおおお!!』 テオドールに押し倒されたリィズは、そのままテオドールと唇を重ね・・・そして・・・ 「・・・ぐへ、ぐへへ・・・ぐへへへへへ・・・。」 口からヨダレを垂らしながら、物凄い表情で興奮するリィズを見て、とても悔しそうな表情を見せるアイリスディーナたち負け犬共だったのだが。 突如部屋中を満たした香ばしい香りが、一瞬でリィズを現実世界へと引き戻したのだった。 「勝ち誇るのは、テオドール君が私の料理を食べてからにしたらどうかね?リィズ君。」 「・・・な・・・!?アスクマン、アンタ一体何考えてるのよ!?」 アスクマンがテオドールに提供した料理・・・それを見たリィズは戸惑いの表情を隠せなかった。 「青椒肉絲(チンジャオ・ロースー)だ。さあテオドール君、遠慮せずに食べたまえ。」 ピーマンがふんだんに詰め込まれた、中国発祥の豚肉料理・・・それをアスクマンは自信に満ち溢れた笑顔でテオドールに提供したのだ。 先程のカティアの件で、テオドールがピーマンを食べられないのは実証済みのはず・・・にも関わらずピーマンが大量に使われた青椒肉絲を提供するとは、一体どういうつもりなのか。 この青椒肉絲がどれだけ美味な代物であろうとも、それでテオドールを満足させられなければ何の意味も無いというのに。 だがリィズの予想に反して、テオドールは目の前の青椒肉絲から放たれる芳醇な香りに引き寄せられ・・・震えた手でピーマンを箸で掴み取ったのだった。 「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!?」 「・・・お、おかしいよな・・・俺、ピーマンは食べられないはずなのに・・・それなのに、こんな・・・」 先程リィズのハンバーグカレーを完食したばかりのはずなのに、青椒肉絲から放たれる芳醇な香りが、再びテオドールの食欲を目覚めさせたのだった。 そしてテオドールが恐る恐るピーマンを口の中に放り込んだ・・・次の瞬間。 「・・・・・・!!!!!!!????????」 ビクンビクンビクン。 全身を凄まじい勢いで電撃が駆け巡り・・・そしてテオドールはいつの間にか無我夢中で、青椒肉絲を口の中に流し込んでいたのだった。 予想外の出来事に、リィズたちは驚きを隠せない。 テオドールはピーマンが大の苦手のはずだ。それなのにこれは一体どういう事なのか。 「う、美味い!!何て美味さなんだ!!これが、このピーマンの苦さが、何故か俺の心を限りなく満たしていく!!」 「そんな馬鹿な!?お兄ちゃん正気に戻ってよ!!ねえ一体どうしたっていうの!?」 「俺にもよく分からねえよ!!だけど美味いんだ!!美味いんだよこのピーマンが!!」 テオドール自身も戸惑いを隠せないようで、嫌いなはずのピーマンが大量に詰め込まれた青椒肉絲を、涙目になりながらもあっという間に平らげてしまったのだった。 「一体何がどうなってるのよ!?この青椒肉絲に一体何があるっていうの!?」 「そう言うだろうと思い、君の分も作っておいた。さあ食べてみたまえ。」 アスクマンが差し出した皿を渋々受け取ったリィズが、箸でピーマンを口にした次の瞬間。 「・・・くっ・・・んんんんんんんっ・・・!!」 ビクンビクンビクン。 リィズの全身を凄まじい勢いで電撃が駆け巡り・・・涙目になりながらリィズは悔しそうにその場に崩れ落ちたのだった。 「どうして・・・!?一体何をどうしたら、こんな・・・!!」 「それはこの青椒肉絲のタレに、隠し味として○○○を仕込んだからなのだよ。」 「な・・・○○○!?たったそれだけでここまで劇的な風味が生まれる物なの!?」 悲しい事に作者に料理の知識が全然無いもんだから、隠し味が伏字になってしまっていた・・・。 驚愕の表情で崩れ落ちるリィズを、ドヤ顔で見下すアスクマン。 その様子をアイリスディーナたちも、戸惑いの表情で見つめている。 「リィズ君。君のハンバーグカレーはピーマンの風味を殺した、所詮はまやかしの料理に過ぎん・・・素材を活かすというのは、こういう事だ。」 「貴様ぁっ!!」 「全くどいつもこいつも、料理という物の本質を全く理解していない連中ばかりで呆れてしまうよ。はーーーーーーっはっはっはっはっは!!」 自分の勝利を信じて疑わないと言わんばかりに、アスクマンは崩れ落ちるリィズを見下しながら高笑いしたのだった・・・。 6.決着 「さて、これでテオドールは全員の料理を食べたようだな。それじゃあ早速だが明日リィズとアスクマンのどちらとデートするのか、テオドール自身に決めて貰おうじゃないか。」 仕方が無いとはいえ、最早完全にリィズとアスクマンとの二者択一になってしまっていた・・・。 ヨアヒムに促されてテオドールは起立し、リィズたちの前に歩み寄る。 「果たしてテオドールはどちらの料理が満足したのか・・・満足した料理を作った奴の右手を取れ。テオドールに右手を握られた奴が、明日テオドールとデートする事になる。分かったな?」 「お兄ちゃん、私のハンバーグカレーが一番美味しかったよね!?」 「まさに失笑する他無し・・・私の青椒肉絲を食べたテオドール君がどれだけ満足したのか、結果は誰が見ても明らかじゃあないか。はははははははは!!」 とても不安そうな表情を見せるリィズ。 自分の勝利を確信したと言わんばかりのアスクマン。 完全に蚊帳の外に置かれてしまったアイリスディーナたち。 そんな彼女たちの光景を、ヨアヒムはニヤニヤしながら見つめていたのだが。 「幾らお兄ちゃんでも、こんな変態野郎とデートしようなんて到底思わないよね!?だから絶対私を選んでくれるよね!?」 「ふん、性別などという下らないしがらみ如きで、私とテオドール君の愛を阻む事など出来る物か!!」 「お兄ちゃん!!」 「テオドール君!!」 2人に迫られ、戸惑いの表情を隠せないテオドールだったのだが。 それでもテオドールは、決断しなければならない。 決断しなければテオドールには、1週間ものトイレ掃除という過酷な罰則が待っているのだ。 リィズのハンバーグカレーも、アスクマンの青椒肉絲も、互いの持ち味を存分に引き出した最高の料理だった。 その中で、どちらの料理が満足出来たかを選ぶとなると・・・。 「・・・ア・・・アスクマン先輩・・・っ・・・(泣)!!」 断腸の想いで、テオドールはアスクマンの右手を取ったのだった・・・。 信じられないといった表情で、全身から漆黒のオーラを放ちながら、リィズは涙目になったテオドールを見つめている。 「お兄ちゃんどうして!?ねえ、どうして私じゃ駄目なの!?私よりもそんな変態野郎とデートなんかしたいの!?」 「仕方がねえだろうがよ!!お前のカレーよりもアスクマン先輩の青椒肉絲の方が美味かったんだからよおっ(泣)!!」 テオドールとて、アスクマンなんかとデートなどしたくはない。 だがどちらの料理が満足したのかを問われれば、間違いなくアスクマンの青椒肉絲の方だったのだ。こればかりはどうしても譲る事は出来なかった。 そう・・・テオドールはこういう奴なのだ。嘘を付く事が出来ない真面目で正直な男なのだ。 こういう誠実な男だからこそ、アイリスディーナたちは一斉にテオドールに惹かれ、恋焦がれていったのだろうが・・・。 「・・・だ、だからって・・・そんな・・・!!男同士でデートだなんて・・・!!」 「ごめんなリィズ・・・父さんに言われてたのに、お前の事を大切にしてやれなくて・・・!!」 「信じられない・・・お兄ちゃんったら不潔よおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」 大粒の涙を流しながら、リィズは調理実習室を飛び出していったのだった。 そんなリィズの無様な姿を、アスクマンはドヤ顔で見下している。 「明日のデート楽しみだね、テオドール君!!」 「くっ・・・!!」 「デートのプランは私に任せておいてくれたまえ!!明日は君の事を存分に楽しませると誓わせて貰うよ!!はーーーーーーーーーーっはっはっはっはっはっは!!」 とても満足そうな表情で、アスクマンはテオドールの肩を抱き寄せながら高笑いしたのだった・・・。 前半へ 戻る
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2008/11/20 『ThirdWorld』両ルート第3話更新 20日、Shun・魂氏のシナリオ『ThirdWorld』の遊戯ルート、なのはルートが第3話まで公開される。 【Shun・魂氏】【シナリオ】【版権】【等身大】 【文責 プラチナ木魚】
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ジャギのショットガン 平山幸雄に支給された。 北斗の拳にてジャギが使用する武器。 バレル(砲身)が短い水辺二連ショットガン。 原作では一回不発しただけで、使われる事は無かったがゲーム版北斗の拳で散弾銃である事が明らかになった。 二回撃つごとにリロードが必要。
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第3話「ウワサ」 A:gdgdティータイム「ウワサ」「ウワサ」(1) 「ウワサ」(2) B:メンタルとタイムのルーム「おじさん飛び」 C:アフレ湖「ふさこ」 エンディング:カメラ縦移動 次回予告:涼宮ハルヒの憂鬱 バックステージ前編 後編 アイキャッチ A:gdgdティータイム「ウワサ」 あらすじ くしゃみが止まらないピクちゃん。くしゃみをすると誰かがウワサをしているというウワサが…実しやかに流れるピクちゃんのウワサとは!?その真実がここに!! 「ウワサ」(1) くしゃみとウワサ くしゃみの回数とうわさの内容についての言い伝えは、地域ごとによって微妙に違うらしい。 一.褒め、 二.謗り、 三.笑われ 一.褒められて、 二.憎まれて、 三.惚れられて、 四.風邪を引く 一.褒め、 二.くさし、 三.けなし、 四つ以上は風のもと 一.褒められて、 二.けなされて、 三.叱られて、 四.風邪を引く 海外文化圏では、誰かがくしゃみをすると周りの人が「Bless you !」などと合いの手を入れることも。 詳細は『世界のくしゃみ』というサイトなどを参照。 「外面はチョーいいじゃん」 シルシルの毒舌が冴える。 「それにさー ピクちゃんって人当たりいいじゃん? 本心は何考えてるか分からないけど、外面はチョーいいじゃん? 当然腹黒い所もあると思うけど、そんな人を悪く言う人なんて、居なくねー?」 「チョーいいじゃん」の所の仕草がそれを強調してる。 ピクピクの表情の変化もよく変わって可愛らしい。 「2回だと悪い噂だっていうウワサじゃね?」 1回だと、良い噂 2回だと、悪い噂だっていうウワサじゃね? 3回だと、どんな噂かっていう確かなウワサは聞いたことないけど、 噂じゃなくて、只の風邪ってウワサじゃね? シルシルのややこしい言い方に対して、ピクピクのやけに丁寧なツッコミが入る。 「ここではくしゃみの元になる方だけを噂にして、 聞いた方の話はウワサじゃなくて、話にして貰えないかなー」 バンギャ風コロちゃん ヴィジュアル系なメイクをしてコギャル風の喋り方でコミックバンドに言及するという、 一見関連してそうでよく考えると色々ごちゃ混ぜなネタ。 ※意味:【バンギャ(バンギャル)】 ダム建設に関する匿名コメント ゲーム「ひぐらしのなく頃に」の雛見沢ダム計画(八ッ場ダム)が元ネタと思われる。 関係ないが顔にモザイクのテクスチャを貼ってるだけなのも注目。 「今度のハッピーセットはスポーツ・ボブらしいよ!」 「シャベッタアアアア!」のCMが一部で流行したマクドナルドのハッピーセット「スポンジ・ボブ」が元ネタ。 応えるピクピクの「そんな話で一々くしゃみしてたら体が持たないよ~」は 「ドナルドのうわさ」のCMの冒頭でドナルドがくしゃみをしているからだろうか。 「ウワサ」(2) 諺「人の噂も七十五日」 「ひとのうわさもしちじゅうごにち」と読むのを使った会話のすれ違いネタ。 ピクピクが会話の中では分かりやすく「なんで、ななじゅうごにちなんだろう?」と読んだことで、 すぐ直前にことわざを引用してみせたシルシルが「何の話ぃ~?」と返す。 ※意味:【人の噂も七十五日】 ジト目から急にニコッとした笑顔に変わるのが、わざとからかってるみたいなウザ可愛さを出してる。 75営業日 ピクピクの「えいぎょぅぉびぃ~?」って言い方が良い味出してる。 うわさ話の広報課は土曜も出勤らしい。 ちなみに営業日換算でも休みなしでも74日間しか塗り潰されていない。 また休みなしの時は11月頭の空白部分もなぜか塗り潰されている。 ちなみに75日の由来は、農業の収穫までの区切りなど諸説あるが、 75日は偶然にもアニメの1クール(12話か13話)分の長さにも近い。 両親の墓に刻まれている文字 asdi ouzy xmdjh the god という文字列を上下180度ひっくり返しているように読めるが、意味は不明。 黒幕ピクピク グラサンに葉巻で、お菓子(買収金)入りのバッグを持ったピクピクの姿も面白い。 「よお」と手を上げて両手をすくめる仕草や、肩で風を切って歩く感じなどもそれっぽい。 シルシルの「当然腹黒いところもあると思うんだけど…」発言といい、 ピクピクは、シルシルとコロコロに弄られながら、2人にツッコミを入れる忙しい運命。 コミックバンド ドラマーがサンタ、ギターが長官…どんな音楽やってるの?と気になる連中。 コミックバンドで長官…といえば聖飢魔IIのエース清水長官を連想させる。 ※聖飢魔IIはコミックバンドと思われているがれっきとした実力派バンドです ボーカルの黄色ジャージは、ブルース・リーの「死亡遊戯」のコスチューム風。 バンド漫画「BECK」(ハロルド作石)にも死亡遊戯などブルース・リーのオマージュが入っている。 俺がコミックバンドブレーカーだ!! 2ch風電子掲示板への書き込み。割と過疎ってる。 「名無しのユーザー」は、したらば掲示板の名前欄か? 血の一週間 名前は「風の谷のナウシカ」の「火の七日間」を連想させる。 ピクピク対決を見守るギャラリーは、「北斗の拳」の雑魚兵っぽい世界観。 ピクちゃんの偽物 いわゆる2Pカラー。格ゲーなどで同キャラ対戦をする際に、 キャラ同士の区別をするため色違いにするという手段がよく用いられる。 ピクちゃんの蹴り技 ストリートファイターシリーズの春麗が用いる必殺技「鳳翼扇」によく似た技を繰り出している。 コロコロの「劣勢の状況から土壇場で奇跡を起こしたピクちゃん」の台詞は、 「背水の逆転劇」と呼ばれる対戦を連想させる。 (鳳翼扇を仕掛けた春麗に、瀕死のケンが逆転勝利する動画) 冒険回(?) 本作の脚本を担当する石舘氏によれば、今回は1話2話のフォーマットから少し外れた冒険回だったらしい。 @kotaro_ishidate 石舘光太郎比較的丁寧に作った#2までと比べると、実は#3はちょっと形を崩した冒険回でした。「もしこの方向性も楽しんでいただけるなら、この後はもっと楽しめるはず」という、いつも以上の実験回と言いますか。なのでもう少し厳しい意見もあるかと思っていましたが、今のところ一安心です。 どの点について「冒険回」と考えていたのかは明らかにされてないが、 1話2話で「gdgdティータイム」のパートが3本立てだったのを2本立てにして2本目を長く取り、 シルシルのピクちゃん腹黒発言や、コロコロの多彩な顔芸初披露だったりと、 すこしはっちゃけた作風になったことを指すのかも知れない。 B:メンタルとタイムのルーム「おじさん飛び」 あらすじ 魔力の弱い3人でも、自由に魔法を使える特殊な部屋。前回の反省を生かし、今度こそ『新しい競技』を考えてみる! 腰ふりピクちゃん 腰に手を当ててクネクネさせるピクピクがちょっとセクシーなポーズ。 「おじさん跳びぃ~?」と怪訝な顔をするときの、ピクピクの下がり眉やシルシルのジト目や、 競技場が出現したときに目を見開くピクピクなど、表情の変化が豊かで可愛らしい。 現実には存在しないおじさん いかにもフリー素材っぽい感じの、やけにリアルな実写調のおじさん。 シルシルの「魔法で出した実際には存在しないおじさん」という台詞は、 作中でボーリングのピンの如く吹っ飛ばされることへのフォローでもあるか。 よく見るとピクピクの棒高跳びのときに、ポールが1~2番目のおじさんを貫通している。 (3D処理にありがちな、オブジェクト同士がぶつかったときにすり抜ける表現) ピクピクが着地の時までポールを抱えているが、 これもキャラをすり抜けて、まるでお尻に刺さってるように見える。 記録を聞いた直後のシルシルやピクピクの驚いた表情など細かい表現や、 「只今の記録は、52おじさんです(アナウンス風)」「思ったより、跳ーべたーかもー(無邪気)」 などの声の演技も、面白さやキャラの可愛さを引き立てている。 足漕ぎ飛行機 プロペラの付け根にロータリーエンジンっぽいのが見えるのに、なぜか足漕ぎ動力の飛行機。 ※参考:【ロータリーエンジン (初期航空機)】 失速して失敗に終わった後、がっくり膝を付いてるコロコロ。こういう表現が細かい。 人間大砲 サーカスとかで見られる人間大砲というより、列車砲の砲身を短くしたような大砲。 無駄に細かい物理演算でおじさんを薙ぎ倒していく。 飛んでる最中のシルシルの表情が見えるコマもある。 おじさん投げ 着弾地点で3人の妖精の身体能力が分かるシーン。ピクピクが一番非力。 シルシルだけは砲丸投げの様なモーションで、投げた距離も一番長い。 C:アフレ湖「ふさこ」 あらすじ 違う世界が見える「アフレ湖」を覗くと、そこには奴が…!このテンションは如何に!? ピクちゃん大やけど 先頭バッターで意外と尺が長いのを頑張って乗り切ったシルシルに対し、 「よぉおーし!」とやけに勢い良く挑んだピクピクだが、シルシルよりも早く終わっている。 放送されたお題の映像も似たような所で終わっているが、シルシルはそれより長く尺稼ぎをしているので、収録現場で見せた映像はもうちょっと長いのかもしれない。 アフレコが終わった直後に気まずい沈黙、シルシルがそっと顔を逸らし、ピクピクが涙目の表情になる。 その後の解説トークの間も、シルシルの困り顔や下がり眉など割とレアな表情が色々見られる。 持田房子 なぜか唐突にお題のモデルに「持田房子」という名前と42歳という設定が付けられる。 房子の周囲の男性の知人は、「周りの友達妻子持ち」なので全員既婚で結婚の予定もないらしい。 その場で即興で適当な名前を付けるのは、明坂さんがラジオなどで多用する芸風(?)とか。 「台本に無いのに」「朝10でこのテンションは…」などメタ発言も多い。 今度はシルシル以上に喋りが長く、映像もシルシルの時以上に長くなっている。 モデルは踊り続ける一方背景に壊す物が無くなったためか、背景左端のドアが一度壊れた後にまた復活するのが見える。 「朝10(あさじゅう)」 朝10時から収録するという業界用語。 一般的に早朝は声が出難い傾向なので、収録は早朝を避ける。 午前10時は収録の中では一番早い時間帯なので「朝一番」の意味合いがある。 仕事始めにいきなりこの高いテンションを出す大変さが滲み出るお言葉。 シルシル曰く「マジリスペクト。」 エンディング:カメラ縦移動 縦移動しかしないカメラ 今回はカメラが一定速度で縦にスクロール「のみ」を行う。 本当に縦移動しかしないので、主役3人を通り過ぎて上空を移して終わる。 これも視聴者の「オイオイ、何でカメラ通り過ぎるんだよ」というツッコミ待ち。 木の葉の所にある3つの窓枠が「橙、黄、桃」の3色に塗られているのが分かる。 妖精3人のパーソナルカラーだが、ここが個室や居住空間なのかは謎。 次回予告:涼宮ハルヒの憂鬱 ピクピクの憂鬱 「涼宮ハルヒの憂鬱(2006年版)」 第13話「涼宮ハルヒの憂鬱Ⅴ」が元ネタ。 第1話の頃に比べると、絵のヤバさが段々上がってきている。 ピクピクが曲をEDアレンジにして似せないよう注意したらしいが、シルシルは不満らしい。 (※「森のバックステージ」参照) 元 ハルヒ「次回!涼宮ハルヒの憂鬱、第5話!」キョン「違う!次回涼宮ハルヒの憂鬱、第13話『涼宮ハルヒの憂鬱Ⅴ』来週は超能力が凄いんだって?」古泉「テレビの前にスプーンを用意してください。では、いきますよ。マッガーレ!」二人「すごっ!」 gdgd ピクピク「次回!ピクピクの憂鬱、第5話!」シルシル「違う!次回ピクピクの憂鬱、第13話『ピクピクの憂鬱Ⅴ』来週は超能力が凄いんだって?」コロコロ「テレビの前にえのきを用意してください。では、いきますよ。マッガーレ!」二人「曲がるよ!」 ※gdgd妖精s予告と「涼宮ハルヒの憂鬱」予告の比較動画 http //www.nicovideo.jp/watch/sm16289459 「次回、【作品タイトル】第●話!」と言った後に「違う、次回、【作品タイトル】第▲話!」と言い直すのは、 元ネタのパロディで、『放送回の順番がシャッフルされて実際の作品の時系列とずれている』という演出。 gdgd妖精sの脚本担当の石舘氏もハルヒの演出についてブログの記事で触れている。 なお、gdgd妖精sの予告の方だと次回は第5話でも第13話でもないので注意。 バックステージ 前編 3話バックステージ:放送前 ロックの精神=10個全てタグロック 「アニメ」「gdgd妖精s」「大穴」「滲み出るエロス」「カメラ仕事しろ」 「ぐだぽよ~」「ロックの精神」「三森すずこ」「水原薫」「明坂聡美」 何と公式配信動画の10個のタグが全てロック済み。 シルシル的にはロックの精神でやったお遊びらしい。 後編 3話バックステージ:放送後 BGMに変化 どうやら予告はピク・シル・コロ誰かが毎回持ちまわり担当とするらしい。 (製作側的には同じメンバーが作ってるわけだが) ピクピクは本家の予告BGMをそのまま使わずED曲の方に似せたとのこと。 しかしシル・コロ両名にどうせやるなら中途半端にやっても一緒と言われ 更に載せられて「ピクルビーム」まで言ってしまう。割と天然。 アイキャッチ
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小説フレームアームズ・ガール 第3話「運命の邂逅」 1.壮絶な戦いの末に グランザム帝国軍のルクセリオ公国城下町への侵攻作戦は、指揮官のアーキテクトがシオンに無様に敗北した事で、グランザム帝国軍の撤退という結果に終わった。 それから両国の間で小規模な小競り合いが何度か繰り広げられたものの、それでもあの時の侵攻作戦の時のような大規模な戦闘は発生せず、両国共に戦況は膠着状態に陥っていた。 絶対的な切り札として投入したフレームアームズ・ガール部隊をもってしても、シオンという厚い壁を崩す事が出来なかったのだ。皇帝ヴィクターが慎重にならざるを得なくなるのも無理も無いという物だろう。 また戦闘中に何故かシオンにキスをしたスティレットの行動に関しても、アーキテクトの懸念通り上層部が軍法会議でスティレットを厳しく追及したものの、それでもアーキテクトの進言によって『ハニートラップによる毒殺のつもりだった』という事で上層部に納得して貰い、何とかスティレットはお咎め無しとされたのだった。 そして、あの時の侵攻作戦から2週間が経過した頃。 グランザム帝国軍のフレームアームズ・ガール部隊は、ルクセリオ公国とコーネリア共和国の国境付近にある、ルクセリオ公国の軍備品生産施設へと進軍を開始。 それに対抗する為にルクセリオ公国騎士団は、シオン隊を現地へと派遣。両軍共にコーネリア共和国の国境付近の上空において、壮絶な戦闘を繰り広げていた。 「もういい加減にしろ!!しつこ過ぎるだろ君らはぁっ!?」 迅雷のバスタードソードによる斬撃を、ビームサーベルで受け止めるシオン。 そのまま鍔迫り合いの状態になったシオンの背後から、シオンをプラズマキャノンで狙い撃とうとした轟雷を、マチルダがビームマシンガンで牽制する。 「シオン隊長に手出しはさせないわよ!!李轟雷少尉!!」 「全く、しつこいのはどっちなんだか・・・!!」 「おらおらぁっ!!お前らの敵はシオン隊長だけじゃねえんだぞ!?」 スティレットに何度も斬撃を浴びせるオスカルだったが、それをスティレットは涼しい顔で受け流し続ける。 そのスティレットの余裕の表情に、オスカルは焦りと苛立ちを隠せずにいた。 そんなオスカルをリックが遠くから陽電磁砲で援護し、スティレットは一旦オスカルから間合いを離す。 「焦り過ぎだオスカル!!お前1人で敵う相手か!?」 「すまねえ、助かりましたよリックさん!!」 「とはいえ、この状況・・・!!オスカルが焦るのも無理は無いかもしれないが・・・!!」 今回の戦闘は、前回の城下町付近での戦闘とは意味合いが違う。政治的な意味でかなり厄介な状況になってしまっているのだ。 前回はルクセリオ公国領地のど真ん中での戦闘だったから、シオンたちもスティレットたちも何も気にする事無く、思う存分戦う事が出来たのだが・・・問題なのは今回の戦闘が、第3国であるコーネリア共和国の領地付近で行われているという事だ。 「マチルダ!!下がり過ぎだ!!コーネリア共和国の領地内に入ってしまえば、重篤な国際問題になるぞ!!」 「そ、そんな事言われたって・・・これでは下がるしか・・・っ!!」 迅雷と何度も剣を交えながら、マチルダに警告するシオン。 襲い掛かる轟雷のプラズマキャノンを何とか避け続けるマチルダだったが、それでも徐々にコーネリア共和国の領地付近へと追い込まれていってしまう。 コーネリア共和国は王妃エミリア・コーネリアの統治の下、絶対中立、差別根絶を国の絶対的な姿勢として掲げている。 今回の戦争においてもエミリアは、ルクセリオ公国にもグランザム帝国のどちらにも属さずに中立の姿勢を崩さない事を、戦争が始まった10年前から公式に表明しているのだ。 そのコーネリア共和国の領地内に入るという事は、中立国を戦闘に巻き込む事を意味する・・・そうなればルクセリオ公国は不当な領地侵犯をしたとして、世界中から激しい非難を浴びる事になるだろう。 そしてそれはアーキテクトたちにとっても同じ事であり、だからこそシオンたちを相手に引き気味の戦いをせざるを得なくなっていた。 「轟雷少尉!!深追いするな!!それ以上は領地侵犯になってしまうぞ!!」 「ああもう!!本当に面倒臭いなあっ!!」 アーキテクトからの警告を受けた轟雷はマチルダへの追撃を止め、シオンと交戦する迅雷の援護へと回る。 国境に到達するギリギリの境界線まで追い込まれていたマチルダだったが、何とか体勢を立て直してシオンの援護に回ろうとする。 そうはさせまいとアーキテクトが、中距離からビームバスタードライフルでマチルダを狙撃する。 放たれた光弾を、何とかビームシールドで防ぎ続けるマチルダ。 「くっ、オラトリオ大尉、邪魔を!!」 「アルザード中尉を集中的に狙え!!私がお前たちを援護する!!奴さえいなくなればシオン隊は烏合の衆だ!!」 「「「イエス!!マム!!」」」 スティレット、迅雷、轟雷が3人がかりでシオンに挑むが、それを読んでいたシオンが鍔迫り合いをしていた迅雷の胸倉を掴み、無理矢理轟雷に向かって投げ飛ばした。 「どああああああああああああああっ!?」 「迅雷!!」 いきなり目の前に飛んできた迅雷の身体を、轟雷は慌てて抱き止める。 「大丈夫!?」 「うん、大丈夫。ありがとう、お姉ちゃん・・・!!」 「シオン・アルザード、本当に何て奴・・・ステラ!?」 ビームサーベルを手にしたスティレットが迅雷と轟雷の隣を通り過ぎ、シオンに向かって颯爽と斬りかかっていった。 シオンとスティレット、2人のビームサーベルが何度も派手にぶつかり合う。 両者互角の死闘の最中、互いに戦場を高速で飛び回った末に鍔迫り合いの状態になり、互いに見つめ合う形になったシオンとスティレット。 「・・・くそっ、またか・・・っ・・・!!」 その瞬間、またしてもシオンに襲い掛かる強烈な頭痛。 シオンの脳裏に映ったのは、またしても炎に包まれた村の中で、大粒の涙を流しながら号泣するスティレットの姿。 そしてスティレットもまた、そんなシオンに対しての懐かしさと愛おしさが、以前よりもさらに増してきているのを自覚していた。 シオンとは面識が無いはずなのに・・・いや、面識が無いはずなのだが・・・スティレットはどうしてもシオンの事を、『敵国の兵士』『他人』だと思う事が出来ずにいるのだ。 一体どうして自分がシオンに対して、こんな感情を抱いてしまうのか・・・訳が分からない自分自身の想いに戸惑いを隠せないスティレットだったが、そんな2人の端末に鳴り響く、コーネリア共和国の領地内へと入り込んでしまった事を示す警告音。 「「・・・しまった!!」」 コーネリア共和国の領地内に入ってしまった事で、2人共『早く領地内から出る事』に意識を取られ過ぎてしまい・・・さらに互いの事に気を取られ注意力が散漫になってしまった2人は、互いにマチルダとアーキテクトの援護射撃を避け切る事が出来なかった。 「シオン隊長!!」 「リーズヴェルト少尉!!早くそいつから離れろぉっ!!」 マチルダのビームマシンガンによって、スティレットの背中のエクシードバインダーが被弾・・・さらにアーキテクトのビームバスタードライフルが、シオンの右足のバーニアを大破させた。 「くそっ、バーニアが!!」 「きゃあああああああああああああっ!!」 互いに被弾したシオンとスティレットが、コーネリア共和国領地内の森の中へと墜落していった。 墜落しながらもシオンは空中で体勢を立て直し、落ち着いて信号弾を上空へと撃つ。 自分が撃墜された今となっては、これ以上の戦闘継続は危険だと判断したのだ。 「シオン隊長ーーーーーーーーーーーっ!!」 「作戦中止!!総員施設まで撤退しろ!!いいな!?」 心配そうな表情で自分を見つめるマチルダに、シオンは墜落しながら撤退命令を出したのだった。 2.運命の邂逅 「パワードスーツの緊急安全装置起動・・・緊急着地用意・・・この高さなら骨折まではしないだろうが・・・いけるか・・・!?」 スティレットと一緒に地上へと墜落するシオンだったが、こういう状況に対応した訓練はもう何度も受け続けていたので、慌てる事無く冷静に対処出来ていた。 幸いにも落下地点は森林地帯なので、墜落の際にどうにか木がクッションになってくれそうだ。 空中で体勢を立て直したシオンは、何とか無事だった左足のバーニアをフル稼働し、着地による衝撃を少しでも和らげようとする。 「シオンさぁーーーーーーーーーん!!」 そこへ両足のバーニアをフル稼働させたスティレットが、心配そうな表情でシオンを追いかけ・・・墜落するシオンを慌てて抱き締めた。 「な・・・リーズヴェルト少尉!?」 「私にしっかりと掴まって下さい、シオンさん!!」 シオンを抱き締めたスティレットは体勢を立て直し、両足のバーニアをフル稼働させて減速。 シオンもまた、とっさにスティレットの身体を抱き締めるような形になった。 そしてスティレットは足元に迫る木の枝を巧みに避けながら、シオンと共に地上にゆっくりと着地したのだった。 「大丈夫ですか、シオンさん?」 「あ、ああ、君のお陰で僕は無事で済んだけど・・・っ!?」 何故か和やかな雰囲気になってしまったシオンとスティレットは、互いに抱き締め合った状態で笑顔で見つめ合うのだが・・・。 「「・・・っ!?」」 互いに敵同士だという事を慌てて思い出した2人は、とっさに間合いを離してビームサーベルを構えたのだった。 何故私は、この人の事を思わず助けてしまったのだろう・・・。 何故僕は彼女に言われるまま、彼女に身を任せてしまったのだろう・・・。 互いに無意識の内に取った行動に、戸惑いを隠せないシオンとスティレット。 シオンと違い両足のバーニアが無事だったスティレットは、そのままシオンを見捨てて1人だけ無事に着地する事が出来たはずだ。 それにシオンもまた、自分を抱き締めた状態の無防備なスティレットを攻撃する余裕は、充分にあったはずだ。 それなのに、一体何故・・・互いにビームサーベルを構えながら、互いに無防備な相手を攻撃出来なかった事に困惑していたのだが。 「・・・止めよう、リーズヴェルト少尉。ここは既にコーネリア共和国の領地内だ。」 溜め息をついたシオンが、ビームサーベルを懐に収めて両手を広げたのだった。 それはスティレットに対して、敵意が無い事を示す証だ。 「ここで僕たちが戦闘をしてしまえば、それこそ国際的な大問題になるだろう。」 「・・・シオンさん・・・。」 「お互いにそれだけは避けたいだろう?だから救助が来るまで互いに一時休戦にしないか?」 正直、これは建前だ。シオンは自分でもそれを自覚していた。 少なくとも思慮深いジークハルトならともかく、あの頭でっかちな大臣たちなら、どんな手段を使ってでもスティレットを殺せとシオンに命令する事だろう。そしてスティレットが敵国の兵士である以上は、それは当たり前の事だ。 それでも何故かシオンは、これ以上スティレットと戦いたくない、傷つけたくないという衝動に駆られたのだ。 「・・・・・。」 スティレットもまた素直にそれに応じ、ビームサーベルを懐にしまい両手を広げた。 互いに敵意が無い事を理解した2人は、そのままゆっくりと両手を降ろす。 その事にシオンもスティレットも、何故か心の底から安堵してしまったのだった。 互いにその事に戸惑いつつも、それでも和やかな表情を見せる。 「・・・取り敢えず現状を把握しないとな。ここはコーネリア共和国の国境付近にある森林地帯のようだけど・・・ここから国境を出ようにも崖で道が閉ざされている。それにこの近くに村や集落の類は無さそうだ。」 「結局救助を待たないといけないという事ですね・・・ならそれまでの食料や水は、私たちだけで何とかしないといけないですね。」 互いに身体を寄せ合いながら、互いの端末で地図を見せ合う2人。 確かにシオンの言う通り、ここから国境を越えて仲間と合流しようにも崖に阻まれており、互いに飛行ユニットを壊された今の2人では空を飛べないので無理だ。それに最短の村まではかなりの距離がある。食料も水も自分たちで自給自足する必要がありそうだ。 ここは様々な動物が豊富に暮らす森林地帯だ。食料に関しては鹿やウサギ、蛇などを捕らえれば何とかなりそうだし、木の実や果実の類も探せば豊富にありそうだ。 問題は水だが・・・ここから2km程離れた場所に水源となる湖がある事を、シオンもスティレットも地図で確認した。 「僕はオラトリオ大尉に右足のバーニアを破壊されてしまったから、飛べないけど・・・君は?」 「私のバーニアもエネルギー残量が残り僅かです。エクシードバインダーも壊されてしまいましたし・・・。」 「なら面倒だけど、湖まで歩いて行くしかなさそうだな。」 歩いて行くにはちょっと面倒な距離だが、別に歩いて行けない程の距離でもない。 シオンもスティレットも端末の地図で方角を確認しながら、湖を目指して歩き出したのだった。 取り敢えず現状やるべき事は、湖に辿り着いて水を確保する事だ。 水さえ確保出来れば、救助が来るまでの当面の生活に関しては何とかなるだろう。 問題なのはコーネリア共和国が、マチルダたちやアーキテクトたちの救助の為の入国を、素直に認めてくれるかどうかなのだが・・・。 「君はサバイバル技能検定は受けているか?」 「はい。士官学校で1級の資格を取りました。」 「なら食料の確保は任せてもいいかな?僕は寝床と薪を何とかするよ。」 「分かりました。シオンさん。」 互いに敵同士だというのに、何故か和やかな雰囲気で会話をするシオンとスティレット。 このコーネリア共和国はルクセリオ公国やグランザム帝国のような近代都市とは違い、緑溢れる自然に囲まれた、美しくも和やかな国だという事が最大の特徴となっている。 清々しい青い空、白い雲、森の安らぎ、小鳥のせせらぎ、遥か彼方に見える壮大な山脈。 そして地面に沢山生えている色とりどりの可憐な花々は、見る者の心を和ませてくれる。 これが戦争でなければ、何だか2人でピクニックにでも出かけているみたいだ。 いや・・・こんな戦争さえ起きていなければ、2人はもっとマシな出会い方をしていただろうに。 政治的な問題で一時休戦しているとはいえ、互いに敵同士だという立場を忘れていないからなのか、シオンもスティレットも無言で湖まで歩き続ける。 だがそれでもスティレットは頭の中で、許されない事だと分かっていながらも、思わずシオンとピクニックに出かける光景を想像してしまったのだった。 シオンの為に心を込めて作った自慢の手作りの弁当を手に、シオンと手を繋ぎながら、2人で笑顔で自然公園を散策する。 そして2人で汗だくになりながらも、自然公園の最大のスポットである壮大な花畑に辿り着く。 その美しくも壮大な光景に、シオンとスティレットの心が癒されていく。 他の多くの観光客や家族連れがのどかな雰囲気を見せ、子供たちが笑顔で走り回る最中、すっかりお腹を空かせたシオンとスティレットは、地面にピクニックシートを敷いて昼食の用意をする。 今日の昼食は、スティレットが心を込めて作ったサンドイッチだ。 ハム、トマト、玉子焼き、カツ、ポテトサラダ・・・色とりどりの具材の華やかさが、シオンとスティレットの食欲を刺激する。 さあシオンさん、どうぞ召し上がれ・・・屈託の無い笑顔でサンドイッチを勧めるスティレット。そしてそれを美味しそうに食べるシオン。 どうしてだろう・・・どうしてスティレットは、シオンとのこんな光景を想像してしまうのだろう。 どうしてこんなにも・・・シオンに対して懐かしさと愛おしさを感じてしまうのだろう。 どうして自分は・・・こうしてシオンと敵同士になってしまったのだろう。 何故かスティレットは悲しい気持ちで、胸が一杯になってしまったのだった。 「着いたよ。リーズヴェルト少尉。」 「・・・っ!?」 シオンに呼びかけられ、スティレットはハッと我に返る。 汗だくになりながらもシオンとスティレットは、何とか水源となる湖まで辿り着いたのだった。 「・・・うわぁ・・・。」 その美しくも壮大な湖の光景に、思わずスティレットは息を呑んでしまう。 「シオンさん見て見て!!凄く綺麗な湖ですよ!!」 「あ・・・うん、そうだね。」 自分の右手を掴んで、とても嬉しそうにはしゃぐスティレットの姿に、思わずシオンは苦笑いしてしまう。 スティレットはシオンが敵だという事を、もう完全に忘れてしまっているようだった。 こうしてシオンに笑顔を見せるスティレットを見ていると、とても軍人とは思えない・・・まさに年頃の女の子の態度その物だ。 スティレットに右手を引っ張られながら湖の目の前に来たシオンは、パワードスーツの右手の手袋を外して水を掬い、試しに一口飲んでみる。 水質は良好で、特に浄化処理をしなくても充分に飲める代物のようだ。それにこれだけの広さなら洗濯や水浴びをするのにも使えそうだ。 シオンは周囲を見渡し、寝床として使えそうな場所の目星を付ける。 周辺の地質も特に荒れている訳ではないので、普通に横になって寝る分には充分な状態だと言えるだろう。 「よし、僕は今から薪を集めに行くよ。君は食料の確保を頼む。取り敢えずヒトナナ・マルマル(17時0分)までに一度ここに集合。いいね?」 「はい、分かりました。シオンさん。」 屈託の無い笑顔を見せるスティレットに、シオンは戸惑いながらも何故か心の中で安らぎを感じたのだった。 3.絶対中立 「ですから私たちルクセリオ公国は、貴国の領地を不当に侵犯するつもりは微塵もありません!!ただ墜落したアルザード中尉の救助に向かいたいだけなんです!!どうしてそれを分かって頂けないのですか!?」 一方その頃、ルクセリオ公国の軍備品生産施設の通信室において、ナナミが必死の形相でコーネリア共和国軍の女性士官に通信を送っていた。 モニター越しに映る女性士官は厳しい表情で、先程からナナミの要求を跳ね除け続けている。 シオンの懸念通り、救助活動の為のシオン隊のコーネリア共和国領地内への入国が、先程からコーネリア共和国に拒否され続けている状態なのだ。 下手をすればシオンの命にも関わりかねないという事もあり、普段は穏やかで心優しいナナミも、さすがに焦りと苛立ちを隠せないでいた。 『それは先程も申し上げた通り、皆さんの入国を許可した場合、共に墜落したリーズヴェルト少尉と交戦状態になる恐れがあるからです。その危険性がある以上は中立国として、皆さんの入国を許可する訳にはいきません。』 「あくまでも救助活動を最優先します!!アルザード中尉を救助次第、領地から即時離脱すると誓います!!ですから・・・!!」 『貴国らが戦争状態を継続中である以上、仮にその発言が貴方自身の本意であったとしても、結果的に皆さんとリーズヴェルト少尉が交戦状態になってしまう恐れがあります。』 「貴国が中立国だという事は分かっています!!無用な戦闘は一切しません!!ですから・・・!!」 『上層部からの攻撃命令が出たとしたら?軍人である皆さんがそれに歯向かえるとでも?』 「・・・そ・・・それは・・・!!」 女性士官の言葉に、思わず言葉を詰まらせてしまうナナミ。 シオン1人だけが墜落したというのであれば、この女性士官もシオン隊の救助活動を別に拒みはしなかっただろう。 救助後に即時離脱しろという条件は付くだろうが、快く入国許可を出したはずだ。 だが問題なのは敵国の兵士であるスティレットが、シオンと一緒に墜落したという点だ。 それが政治的に色々とややこしい状況を生み出してしまっており、シオン隊の救助活動が拒まれてしまっているという訳だ。 コーネリア共和国としても、どちらにも属さない絶対中立の立場を取っている以上、領地内で戦闘をされたら困ると考えるのは当然だろう。 この女性士官が言っている事は、国としての立場を考えれば至極当然の事なのだ。むしろ無理な事を言っているのはナナミの方であり、シオンとスティレットがコーネリア共和国に迷惑を掛けているような状況になってしまっているのだ。 ナナミもそれを理解しているからこそ、女性士官に何も言い返す事が出来ずにいるのだ。 「だけど・・・だけど、このままじゃシオン隊長が・・・!!」 『いずれにしても皆さんの入国を許可する訳にはいきません。理由の如何を問わず、入国した場合は領地侵犯とみなし、ただちに皆さんを攻撃致します。』 「ならせめてドローンでの食料と水の運搬だけは許可して頂けませんか!?墜落した大体の場所は分かっているんです!!シオン隊長だって今頃お腹を空かせてるはずだから・・・!!」 『それも認められません。ドローンに武器と弾薬を積まれる可能性もあります。』 「それじゃあシオン隊長に飢え死にしろって言うんですかぁっ!?」 思わず想像してしまったナナミは、すっかり涙目になってしまったのだった。 対照的に女性士官は顔色1つ変えず、毅然とした態度をナナミに見せ続けている。 『既に我々の方からも捜索隊は出しています。こちらとしてもアルザード中尉とリーズヴェルト少尉には、早々に領地内から出て行って頂きたいですから。』 「そんな、シオン隊長の事をまるで厄介者みたいに・・・!!」 『事実、現状では厄介者なのではないですか?敵同士である2人がいつ交戦状態になっても不思議ではないでしょう?最も2人が我が国に亡命するというのであれば、我々は喜んで2人を歓迎致しますが・・・。』 「亡命って、シオン隊長が私たちを見捨てて、そんな事する訳ないじゃないですか!!」 『亡命しないのなら、2人は我々を戦火に巻き込む厄介者です・・・とにかく皆さんの入国を許可する訳にはいきません。入国した場合は領地侵犯とみなし、容赦なく攻撃対象とします。』 「ちょ・・・!!」 ナナミが何かを言う暇も無く、女性士官に一方的に通信を切られてしまったのだった。 その一部始終を見ていたマチルダたちが、何とも歯がゆそうな表情を見せている。 ナナミが言っていたように、シオンが墜落した大体の場所は分かっているのだ。そこを中心に捜索すれば、シオンを探し出す事は決して難しくはないだろう。 だが入国を許可されていない以上は、救助に行けば領地侵犯となり、国際的な大問題となる・・・救助に行きたくても行けない現状に、マチルダたちはやり切れない思いで一杯だった。 「・・・シオン隊長・・・今頃お腹空かせてないかしら・・・空腹のあまり毒キノコとか食べて、お腹を壊すような事にならないといいけど・・・。」 シオンはサバイバル技能検定の1級の資格を持っている。間違ってもナナミが心配するような事態にはならないだろうが、それでもナナミは不安を隠せなかった。 とても心配そうな表情で、ナナミはシオンが墜落した森を窓から見つめている。 既に時計は午後6時を回っていた。本来なら今頃は夕食を食べている時間だ。 今頃は施設の食堂の従業員たちが、自分たちの防衛任務を命懸けで遂行してくれているマチルダたちの為に、温かい夕食を用意してくれている頃だろうが。 「何でぇ何でぇ、こいつは一体何の騒ぎだ。ああん?」 その時ナナミの背後から、作業着姿のガイウスが声を掛けてきたのだった。 予想外の人物の登場に、マチルダは唖然とした表情になる。 「お、お父さん、何でこんな所にいるのよ!?」 「仕事だよ仕事。この施設に野菜を納品しに行ったら、お前がここにいるって職員の連中に言われたから声を掛けたんだよ。お前こそ何でこんな国境沿いの田舎にいるんだよ?」 「そりゃ、グランザム帝国軍がこの施設に攻撃を仕掛けて来たから、施設の防衛任務の為に来たに決まってるでしょ!?」 「まあそんな事はいい。それはそうとシオンはどうしたんだ?姿が見えねえようだが・・・。」 「・・・シオン隊長は・・・。」 マチルダに事情を説明されたガイウスは、呆れた表情で深い溜め息をついたのだった。 「何だよアーキテクトだかチーズケーキだか何だか知らねえが、たかが女1人に、しかも一度負かした奴に撃墜されたってのか。シオンの奴ちゃんとキンタマついてんのか?」 「キ、キンタマって・・・お父さん、ナナミ軍曹が目の前にいらっしゃるのよ!?ちょっとはデリカシーって物を考えなさいよ!!」 「で、お前らはシオンを助けに行く事も出来ずに、ここで足止めを食らっちまってるって訳か。何だかよく分からねえが、人命が懸かってんだから助けに行ってもいいんじゃねえのか?」 「そんな簡単な問題じゃないのよ!!入国を許可して貰えない以上は、勝手に動いたら領地侵犯になっちゃうの!!」 マチルダだってシオンを助けに行けるのなら、今すぐにでも助けに行きたい。 だが現状ではマチルダが言うように、領地内に入った時点で領地侵犯になってしまい、国際的な大問題になってしまうだろう。 下手をすればルクセリオ公国がコーネリア共和国に、戦争を仕掛けたという事にもなってしまいかねないのだ。 「・・・ったく、コーネリア共和国の連中も頭でっかちな奴らばっかだな。人命救助の何が悪いってんだ。なあ?」 「国王陛下からも待機命令が出てるし、隊長のパワードスーツの通信機能も壊れちゃったみたいで、さっきから全然繋がらないのよ。今は八方塞がりな状況なのよ。」 「で、お前らはちゃんと飯食ってんのか?言っておくがシオンの事が気になって飯が喉を通らねえなんてのは、許されねえからな?」 「そ、それは・・・」 鋭い眼光を見せるガイウスの言葉に、マチルダは思わず言葉に詰まってしまった。 ガイウスの指摘通り、確かにマチルダたちはシオンの事が心配になるあまり、夕食の時間になっても食事を取っていないのだ。 それを悟ったガイウスは、何とも呆れた表情で深い溜め息をついたのだった。 「あのなあマチルダ。お前ら軍人だろうが。この施設の防衛任務でここに来てるんだろうが。ちゃんと飯を食っておかねえと、いざという時にここの施設の連中を守れるのか?あ?」 「それは・・・確かにお父さんの言う通りなんだけど・・・。」 「大体、そのチーズケーキが再びここを襲ってきたらどうすんだ?」 「チーズケーキじゃなくてアーキテクト!!」 呆れるマチルダだが、それでも確かにガイウスの言う通りだ。 ちゃんと食事をして睡眠を取って万全の体調を維持する事も、軍人としての重要な仕事だ。 でなければ敵が攻めてきた時に全力を出せず、国や人々を守れないなんて事になりかねない。 シオンの事は確かに心配だが、だからと言って自分たちが空腹のままでいいという理由にはならないのだ。 「・・・轟雷少尉、迅雷少尉。リーズヴェルト少尉が心配なのは分かるが・・・食事をする事も軍人としての立派な責務だからな?」 そしてそれは輸送艦の中で待機中の、フレームアームズ・ガール部隊にとっても同じ事のようで・・・スティレットを心配するあまり食事が全然喉を通らない轟雷と迅雷に、アーキテクトが苦言を呈していた。 「いざという時に前線で戦う我々が、万全の状態でいられなくてどうするというのだ。」 「それは・・・確かにそうなんですけど・・・私があの時アルザード中尉に、無様に投げ飛ばされたりなんかしなければ・・・!!」 「お前1人が背負い込むことは無い。奴を仕留め切れなかった私にも責任はあるのだからな。」 肩を落とす迅雷を励ましながら、アーキテクトは迅雷の口の中に、クリームシチューを入れたスプーンを無理矢理ぶち込んだのだった。 「ほれ迅雷少尉。あ~ん。」 「もががががが。」 「どうだ?美味いだろう?何しろ私の手作りのシチューなのだからな。不味いわけがない。」 「・・・んぐ・・・んぐ・・・お、美味しいです・・・。」 「だろう?ならば冷めない内に早く食べてしまえ。」 確かにアーキテクトの言う通りだ。コーネリア共和国に入国許可を貰えていない現状ではあるが、それでも何が起こるか分からないのだ。 とっととスティレットを連れて行って欲しいから救助に行けと、コーネリア共和国側に言われるかもしれないし、もしかしたら再びシオン隊と交戦する事になるかもしれない。 その時に自分たちが万全の状態でいられなくて、どうするというのか。 スティレットが安心して帰れる場所を守る事・・・それも自分たちがやるべき事なのだ。 その決意を胸に、轟雷も迅雷も決意の表情で、アーキテクトが作ったクリームシチューを必死に口の中に流し込んだのだった。 「やれやれ、私としては、もっと美味そうな顔で食べて貰いたい物なのだがなぁ。」 「・・・あ、キノコ。」 「何だ轟雷少尉。キノコが苦手なのか?軍人なんだから好き嫌いはいかんぞ。」 「いえ、ステラったら空腹のあまり毒キノコを食べちゃって、お腹を壊したりしてなきゃいいけど・・・って思って。」 「奴はサバイバル技能検定の1級の資格を持っている。間違ってもそんな事にはならんだろう。」 「それは確かにそうなんですけど・・・。」 クリームシチューを食べながら、轟雷はスティレットが墜落した森を窓から見つめ続ける。 今頃スティレットは無事だろうか。一緒に墜落したシオンと交戦するような事態になっていなければいいのだが。 シオンは思慮深い男だから、そんな事をしてしまえば重篤な国際問題になってしまう事は分かっているはず、だからスティレットと一時休戦状態になっているはずだと、そうアーキテクトは言っているのだが・・・それでも轟雷は心配で仕方が無かった。 (早く戻ってきてよ、ステラ・・・隊長が作った美味しいシチューが待ってるから・・・。) 自軍からの救助はおろか、補給さえも全く期待出来ない。食料も水も自分たちで自給自足するしかない。温かい毛布に包まれて眠る事さえも出来ない。 しかも政治的な事情から一時休戦状態になっているとはいえ、敵国の兵士と共同生活を送る羽目になってしまっているのだ。 お互いに何がきっかけとなって、いつ寝首を掛かれるか分からない・・・シオンとスティレットは仲間たちから心の底から心配されながら、そんな過酷なサバイバル生活を・・・。 「シオンさ~ん、晩御飯の用意が出来ましたよ~。」 「ああ、すぐに行くよ。こっちも丁度寝床の用意が出来た所だ。」 「取り敢えず鹿と蛇とキノコを焼いてみました。デザートはリンゴとオレンジですよ。」 「おっ、これは美味そうだな。それじゃあ両手を合わせて・・・。」 「「いっただきまーす!!」」 物凄く楽しそうに満喫していたのだった。 後半へ 戻る
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小説フレームアームズ・ガール 第3話「運命の邂逅」 4.空白の過去 既に日が沈みかけている薄暗い森の中で、シオンとスティレットは焚火を前に向かい合うような形で、穏やかな雰囲気の中で夕食を食べていた。 焚火に関してはスティレットが、尖った木の先端をゴリゴリして火を起こすアレで作り出した。 鹿と蛇もスティレットが捕まえ、プロの料理人顔負けのナイフ捌きで調理した物だ。 的確に内臓と血を抜かれた肉が焚火の中で焼かれ、何とも香ばしい香りを漂わせている。 シオンとスティレットの命を繋ぐ為に、失われた命・・・生きるという事は他の命を奪うという事を意味するのだ。シオンもスティレットもそれを忘れる事無く、自分たちが殺して焼いた鹿と蛇の肉を、感謝の気持ちを込めて口にしていた。 そして焚火のすぐ近くには、シオンが作り出した即席の寝床が用意されている。 これもその辺に落ちていた落ち葉を掻き集め、その上に藁を敷いた物だ。これだけでも藁の中は結構温かいので、身体を冷やす事無く眠る事が出来るだろう。 その寝床の傍らには2人が脱いだパワードスーツとフレームアームが、綺麗に整頓されて置かれている。 「不思議・・・ですよね。敵国の・・・しかもルクセリオの英雄とまで呼ばれているシオンさんと、こうして焚火を囲んで食事をする事になるなんて・・・。」 焼いた蛇肉をかじりながらスティレットは、バチバチと静かな音を立てる焚火を見つめながら、穏やかな表情で何となくそう呟いた。 中立国のコーネリア共和国の領地内に墜落したという、複雑な政治的な事情があって止むを得ず一時休戦している2人。 いや・・・本当に止むを得ず・・・なのか。 何故かシオンもスティレットも、心の中ではこうなる事を望んでいたような・・・そんな気がしてならないのだ。 シオンはスティレットと共同生活を送る内に、スティレットとの戦闘中にも度々感じていた激しい頭痛に、再び襲われるようになり・・・スティレットに対しての懐かしさと後悔の念がどんどん増しているのを感じていた。 またスティレットも、シオンに対しての懐かしさと愛おしさが、以前にも増して一層と膨らんでいるのを自覚していた。 一体この感覚は何なのか・・・どうして互いに対して、こんな想いを抱いてしまうのか。 1つだけ確かなのは、本来なら敵国の兵士が目の前にいるのだから、軍人として抱かなければならないはずの警戒心と敵対心が、今のシオンとスティレットからは全く感じられないという事だ。 「ルクセリオの英雄か・・・皆が僕の事をそう呼ぶけど、僕はそんな大それた存在じゃないよ。」 「だけど貴方はこれまでに、沢山の人々の命を救ってきたんでしょう?それに貴方は国の人々から慕われている。ただ強いだけでは決して英雄だなんて呼ばれないはずですから。」 「それでも・・・守れなかった命が沢山あるんだ。それに僕は本当に守りたかった人の命を、守る事が出来なかった・・・。」 シオンもまた焚火を見つめながら、とても悲しげな瞳で鹿肉を口にしたのだった。 今でもたまに夢に出て来る・・・1年前に妻のアルテナが、産まれたばかりの娘のセリスが、戦火に巻き込まれて亡くなってしまった光景。 あの時のような悲しみは、もう二度と味わいたくはない・・・もう誰にも味合わせたくない・・・その強い想いと信念を胸に、これまでシオンは必死に戦ってきた。 そしてシオンの活躍で、多くの者が命を救われた・・・だがシオンとて人間なのだ。自分の目の届く全ての者を守れる程、万能ではないのだ。 「・・・だけど、貴方のお陰で命を救われた人だって大勢いる・・・貴方は多くの人たちに感謝されている・・・それは誇るべきだと私は思います。」 「それは・・・確かにそうなんだけどさ。」 「私も帝国の人たちから救世主なんて呼ばれてますけど・・・私はシオンさんとは違う・・・ただ皆に都合がいいように持ち上げられているだけですから・・・。」 オルテガ村で初めてシオンと戦った時、あれだけシオンに追い詰められていたにも関わらず、あの英雄シオンを圧倒したなどと記事やニュースで捏造され、真実を知らない国の人々から熱狂される騒ぎになってしまった。 今思えばアーキテクトの言う通り、これも皇帝ヴィクターの政略の1つなのだろう。 救世主という絶対的な存在を作り上げる事によって、国中の士気を高める・・・兵士たちに希望を持たせる・・・祀り上げられた本人の意思など関係無いのだ。 「そう・・・私はシオンさんとは違う・・・私はシルフィさんを守ってあげる事が出来なかった・・・。」 「シルフィって・・・まさかラクティの妹さんの!?」 「やっぱりシオンさんも知っていたんですね。お姉さんをスパイに仕立て上げる為に人質に取られたシルフィさんを、私が世話をしていたんですけど・・・オルテガ村でシオンさんと戦った後、私が城に戻ったら・・・彼女はもう用済みになったとかで殺されたんです。」 「・・・そうか。君がラクティの妹さんの世話をしてくれていたのか。」 あの時のラクティの狂気に満ちた瞳は、今もシオンは忘れる事は無い。 今は立ち直ってジークハルトの付き人をしているのだが・・・たった1人の家族を失ったラクティの心には、一生消えない深い傷が残ったはずだ。 「・・・ごめんなさい・・・私の力が足りなかったばかりに・・・。」 「それは君のせいじゃない・・・こんな下らない戦争が悪いんだ。」 泣きそうな顔のスティレットを見つめるシオンに、怒りや憎しみの感情は一切感じられなかった。 シルフィが帝国によって殺されたのは事実だ。だが帝国の兵士だからという理由で、それを全部スティレットのせいにしてしまうのは筋が違うという物だ。 恐らくスティレットは、どうにかしてシルフィの事を救おうと尽力してくれていたのだろう。でなければ敵国の人間であるシルフィの死を、こんなにも悲しんでくれるはずがないのだ。 「・・・シオンさんは優しいんですね。本当なら私に罵声を浴びせてもおかしくないのに。」 「僕はただ、僕が思った事を正直に君に言ったまでだよ。」 「やっぱりシオンさんは英雄ですよ・・・私なんかとは全然違う・・・シオンさんのご家族も鼻が高いんじゃないですか?」 「・・・僕に家族なんていないよ。」 皮肉そうな笑みを浮かべるシオンを見て、スティレットは申し訳ない気持ちで一杯になった。 「まさか、この戦争でお亡くなりになられたとか!?もしそうだったら私・・・!!」 「いや、父も母もまだ生きてるよ。今住んでる場所も分かってる。」 「住んでる場所も分かってるって・・・一体どういう事なんですか?」 「僕は幼い頃、両親に捨てられたんだ。」 「・・・捨てられた・・・!?シオンさんが!?」 全く予想もしなかったシオンの言葉に、スティレットは驚きを隠せなかった。 ルクセリオの英雄とまで呼ばれているシオンが、孤児だった・・・それも戦争で両親を失ったのではなく、捨て子だったというのだ。 「僕の物心が付く前の話だよ。僕は公園に置き去りにされて泣き叫んでいたらしくてね。そこへたまたま通りかかった陛下が、僕を児童養護施設に送ってくれたらしいんだ。」 「・・・そう・・・だったんですか・・・。」 「陛下はあの時の僕の事を、鼻タレ坊主だったとか笑いながら言ってたんだけどさ。とにかく僕は陛下に命を救われて、施設の皆と一緒に暮らしてきた・・・決して裕福とは言えなかったけど、それでも僕は優しいシスターに温かく育てられて、それなりに幸せだったよ。」 「それで、どうしてまた軍人なんかになっちゃったんですか?」 「中学の頃に施設の仲間の1人が、税金泥棒だとか言われて酷い虐めを受けたのを目撃してね。僕は必死に仲間を助けようとしたんだけど、腕っぷしでは全然敵わなくて、ボコボコにされて・・・周りの皆に助けを求めたんだけど、報復を恐れたのか誰も僕を助けてくれようとしなかった。」 「・・・そんな・・・酷い・・・。」 想像しただけでスティレットは、悲しい気持ちで一杯になってしまった。 施設の子供たちを税金泥棒とか・・・どうしてそんな酷い事を平気で言えるのか。 それに必死に虐めから仲間を庇ったシオンの事を、誰も助けようとしてくれなかった・・・今のシオンからは想像も付かないが、こんな酷い話があっていいのだろうか。 私なら絶対にそんな酷い事はしない・・・私ならシオンさんを守ってあげるのに・・・スティレットは心の底からそう思ったのだった。 「結局僕と仲間を虐めた奴らは、騎士団に逮捕されて少年院送りになったんだけど、その時に僕は陛下に言われたんだ。誰かに助けを求めるのは構わない。だがそれで助けを貰えるとも限らない。本当に大切な人を守りたいなら、お前自身が強くなれと。」 「・・・それでシオンさんは、そのまま軍人になっちゃったんですか!?」 「陛下に志願して、中学卒業後に士官学校に入れて貰ったんだ。大切な人を守れるだけの力が欲しいと思ったから・・・そしたらいつの間にか英雄呼ばわりだよ。」 他人から見れば美談にしか聞こえないだろうが、シオンにとっては皮肉でしかない。 中学の頃に自分を税金泥棒だと虐めた連中でさえも、今では逆にシオンの事を英雄だと称えるようになってしまったのだ。 そしてシオンは自分を虐めた連中を虐め返すような気にもなれなかった。そんな事をしても逆に惨めでしかないのだから。 「それで僕が任官して、戦場に出るようになって・・・あれは確か僕が准尉に昇進したばかりの頃だったかな・・・突然僕を捨てた両親から連絡が入ったんだ。今まで済まなかった、これからは一緒に暮らさないかってね。」 「それなのにシオンさんは、今はご両親と別居していらっしゃるんですか?」 「両親は鉄工所を経営していたんだけどね。今までの罪滅ぼしがしたいと、僕は両親の実家に招待されたんだ。だけどそこへ消費者金融の人が突然現れて、いつになったら借金を返してくれるんだ、軍人になった息子が払ってくれるんじゃないのかって、そう怒鳴り散らしてきたんだ。」 「・・・それって、まさか・・・。」 「そうだよ。結局僕の軍人としての収入と名声が目当てだったんだ。それで僕は家を飛び出したんだよ。借金なら自分たちで何とかしろ、もう二度と会う事は無いと罵声を浴びせてね。」 今思えば両親が幼少時のシオンを捨てたのも、経営する鉄工所が経営難に陥った事で、シオンを育てられるだけの余裕が無くなってしまったからなのだろう。 今まで済まなかったという両親の言葉が、心の底からの真実の物なのかは分からない。本当にシオンに対して申し訳無いと思っていたのか、それともシオンに借金の肩代わりをさせる為の物だったのか、それはシオンには分からない。 だがそれでも両親が、シオンの事を借金を返す為のダシとして扱ったのは事実だ。それがシオンには何よりも許せなかったのだ。 「結局両親が経営していた鉄工所は、土地と建物を借金の担保に取られて経営破綻して、両親は裁判所から破産宣告を受けたんだ。今は別の仕事に就いて細々と暮らしてるみたいだけど、それでも僕はもう二度と両親に会うつもりは無いよ。」 「・・・シオンさん・・・。」 「どうしてだろうな・・・どうして僕は敵国の兵士である君に対して、こんな事をベラベラと・・・」 「それでもシオンさんのご両親は今もご健在なんでしょう?シオンさんの事を大切に思ってくれているんでしょう?」 「・・・それは・・・。」 とても悲しげな瞳で自分を見つめるスティレットに、シオンは戸惑いを隠せない。 シオンが置かれた境遇には同情する。だがそれでもスティレットは言わずにはいられなかった。 「だったらシオンさんはご両親と、一度本気で向き合って話し合うべきなんじゃないかって・・・そう私は思います。例えシオンさんが本当にご両親と、完全に縁を切るつもりなのだとしても。」 「・・・リーズヴェルト少尉・・・。」 「シオンさんは、まだ恵まれてる方ですよ。私はこの戦争で両親を失ったんですから。今は迅雷ちゃんや轟雷ちゃん、それにオラトリオ大尉も傍にいてくれるから、寂しくはないですけど・・・。」 再びシオンから視線を外して、スティレットは自分が起こした焚火を、悲しみの表情で見つめ・・・そして自分の過去をシオンに語り出した。 敵国の兵士であるシオンに、こんな事を言っても仕方が無いのに・・・それでもスティレットはシオンに自分の過去を知って貰いたいと、そう思ったのだ。 「私は5年前までコーネリア共和国の国境付近の、帝国領のゼピック村という所で両親と一緒に暮らしていたんですけど・・・。」 「・・・ゼピック村で暮らしていた・・・!?5年前・・・!?」 「だけど突然ルクセリオ公国騎士団が攻めてきたらしくて・・・村が戦火に包まれて、私の両親も騎士団に殺されたらしくて・・・。」 「・・・ま・・・まさか・・・。」 「私はその時の、ただ1人の生き残りらしいんですけど、何故か私にはその頃の記憶が全然無くて・・・泣き叫んで路頭に迷っていた私を、皇帝陛下が救って下さったらしいんです。それで私は・・・?」 言いかけたスティレットがシオンに視線を戻したのだが、その時だ。 シオンの表情が急に青ざめていた。顔から酷い冷汗が出ていて、全身が震えていた。 シオンが手にしていた食べ終わったばかりの鹿肉の骨が、シオンの震える右手からポロリと離れて、力無く地面に落ちていた。 このシオンの変わり様は、はっきり言って尋常ではない。 一体どうしたというのか・・・心配そうな表情を見せるスティレットに、シオンは驚愕の事実を語ったのだった。 「・・・シオン・・・さん・・・?」 「・・・僕は5年前・・・ゼピック村への威力偵察任務に参加していた・・・らしいんだ・・・。」 「らしいって・・・一体どういう事なんですか?」 「僕も何故かその時の記憶が曖昧になっていてね・・・陛下が言うにはその時の作戦で、僕が事故に遭ったらしいんだけど・・・とにかく僕は5年前に、任務でゼピック村に・・・ぐうっ!!」 「シオンさん!?」 「ぐあああああああああああああっ!!」 まただ。またしても突然シオンに襲い掛かった、激しい頭痛。 これまでもシオンはスティレットと戦う内に、もう何度も原因不明の頭痛に見舞われ続けていた。 それがより一層激しさを増して、シオンの事を苦しめている。 心配そうな表情でシオンに駆け寄るスティレットだったのだが、そんなシオンの脳裏に、またしても戦火に包まれた村の光景が・・・断片的な記憶が浮かび上がった。 家の中で泣き叫ぶスティレット、ハンドガンを手にする自分・・・そしてスティレットを庇うように倒れている、スティレットの両親の姿・・・。 「頭が・・・頭がぁっ・・・!!」 「シオンさん、しっかりして下さい!!シオンさん!!」 「まさか・・・まさか僕は・・・そんな・・・っ!!」 『アルザード上等兵!!貴様、何をやっているかぁっ!!』 『嫌ああああああああああ!!パパあああああああ!!ママあああああああああっ!!』 『君の両親は死んだ。だけど君は・・・。』 「あ・・・あああ・・・そんな馬鹿な・・・僕は・・・!!」 「シオンさんっ!!」 シオンの脳裏に断片的に浮かび上がった映像であり、確たる証拠とまではいえない。 それでもシオンは、考えられる中でも最悪の事態を想像してしまったのだった。 倒れているスティレットの両親、泣き叫ぶスティレット・・・そしてハンドガンを手にする自分・・・。 「まさかそんな・・・僕は5年前に・・・君のご両親をこの手で殺したのか!?」 「・・・そんな事無いですっ!!」 むぎゅっ。 目から涙を流しながら、スティレットはシオンの顔を優しく抱き締めた。 驚愕の表情のシオンの顔を、スティレットの豊満な胸が包み込む。 その柔らかくて優しい胸の感触に、思わずシオンは顔を赤らめてしまうが・・・同時にシオンを苦しめていた頭痛が次第に収まっていったのだった。 「・・・リ、リーズヴェルト少尉・・・あの・・・。」 「シオンさんはそんな人じゃない!!絶対にそんな酷い事をする人じゃない!!」 「だけど僕は・・・5年前・・・。」 「私はシオンさんを憎みたくない!!お願いだから私にシオンさんを憎ませないでぇっ!!」 自分の顔を抱き締めるスティレットの両腕が震えているのを、シオンは敏感に感じ取っていた。 そしてスティレットもまた、何故自分がこうやってシオンの心と身体を慰めているのか、全然理解出来ないでいた。 シオンは敵国の兵士なのに。それどころか自分の両親を殺した仇かもしれないのに。 それなのに・・・それでもスティレットは、シオンに対しての懐かしさと愛おしさが止まらなかった。むしろ今でもどんどん膨らんでいるのを実感していた。 この気持ちは一体、どこから湧いて出てくるのだろうか・・・。 「・・・リーズヴェルト少尉・・・僕は・・・。」 「ステラ。」 スティレットはシオンの顔をぎゅっと抱き締めながら、潤んだ瞳でシオンにそう囁いた。 「親しい人たちにはそう呼ばせています。私の事はステラって呼んで下さい。」 「あの・・・だけど・・・。」 「ステラって呼んでくれるまで離してあげません。」 「・・・・・。」 「大体シオンさんだって私と戦ってる時、私の事を何度かステラって呼んでたじゃないですか。」 確かにスティレットの指摘通り、これまでシオンはスティレットの事を、無意識にステラと呼んでしまう事が何度かあった。 それが何故なのかはよく分からなかったのだが・・・何故かスティレットの事をステラと呼ぶ事に、今のシオンには全く抵抗が感じられなかった。 「・・・うん、分かったよ。ステラ。」 「・・・シオンさん・・・。」 シオンがスティレットの身体を、ぎゅっと抱き締めた・・・その時だ。 『・・・おうおう、2人共敵同士だってのに熱いねぇ。ヒューヒュー。』 「「・・・っ!?」」 突然上空から響いた声に、シオンとスティレットは慌てて顔を赤らめて離れたのだった。 5.救助 シオンとスティレットの頭上に姿を現したのは、コーネリア共和国軍が運用する輸送艦『フェニックス』だった。 既に日が沈み薄暗くなってしまった周囲を、フェニックスから照らされる光がシオンとスティレットを温かく包み込んでいる。 フェニックスはゆっくりと高度を下げて地上に着陸し・・・驚くシオンとスティレットの前に姿を現したのは、コーネリア共和国軍所属の兵士たちだった。 そして彼らを率いている1人の女性士官が、ゆっくりとシオンとスティレットの下に歩み寄ってくる。 「アンタらがシオン・アルザード中尉とスティレット・リーズヴェルト少尉に間違いないね?私はコーネリア共和国軍所属のアイラ・アーテル中尉だ。」 「コーネリア共和国軍か・・・もしかして僕たちを救助に・・・いや、追い出しに来たと言った方が正しいのかもしれないな。」 「私は別にそんなつもりじゃないんだけどさ。上層部がアンタらを早く捜索して、とっとと領地外に送り届けろってうるさくてねぇ。」 アイラと名乗った女性は、シオンと同じ位の年齢だろうか・・・とても大ざっぱで姉御肌の性格の女性のようだった。 とてもニヤニヤしながら、シオンとスティレットの事を見つめている。 「て言うかさ。アンタら本当に敵同士なのかい?とても仲良さそうに飯食ってるかと思えば、そのお嬢ちゃんがいきなりアンタを抱き締めたりするし。」 「・・・それは・・・いやでも、確かに僕とステラは・・・。」 「まあいいさ。とにかく2人共無事で何よりだ。取り敢えずフェニックスに乗りなよ。既にアンタらの所属部隊には連絡済みだから、国境まで送ってやるよ。」 「済まない、恩に着るよ。アーテル中尉。」 正直、本当に助かった・・・シオンは心の底からそう思ったのだった。 コーネリア共和国の上層部にとっては確かに自分とスティレットの存在は、領地内での無用な争いを引き起こしかねない危険因子なのかもしれない。だから一刻も早く領地から出て行って欲しいという彼らの考えを、シオンはよく理解しているつもりだ。 だが経緯はどうあれ、これで無事に部下たちの下に帰れるのだ。今頃はシオンの事をとても心配しているはずだから、早く戻って安心させてやらないといけない。 再びパワードスーツとフレームアームを身に纏ったシオンとスティレットは、アイラに案内されてフェニックス内部の応接室へと通される。 2人を乗せたフェニックスが静かな音を立てながら、ゆっくりと地上を離れ・・・国境付近へと飛翔する。 応接室の椅子に座ったシオンとスティレットに、アイラはホットコーヒーを提供したのだった。 「それじゃ、早速任務を遂行しましょうかねぇ。頭でっかちな上層部たちからは、これからアンタらを早急に領地外まで追い出せと言われてるんだけどさ。」 「それは充分承知しているよ。中立国のコーネリア共和国にとって僕とステラの存在は、厄介者以外の何物でも無いという事は分かっているつもりだ。」 「・・・実はここだけの話、私はエミリア様から極秘任務を受けていてね。」 シオンとスティレットの反対側の席に座ったアイラは、突然静かにそう切り出してきた。 コーネリア王国王妃の、エミリア・コーネリア・・・彼女がアイラに極秘で依頼とは、一体何事なのか・・・怪訝な表情になるシオンとスティレットだったのだが、次の瞬間アイラは2人が予想もしなかった、とんでもない事を言い出した。 「・・・単刀直入に言うよ。エミリア様がアンタらに、うちへの亡命を勧めてるんだけどさ。」 「・・・はああああああああああああ!?」 いきなりのアイラの言葉に、思わず仰天してしまうシオン。 無理も無いだろう。本来ならば国の統治者としての立場からすれば、自分とスティレットには一刻も早く領地外に出て行って貰いたいはずなのに。 実際にコーネリア共和国の上層部たちは、最初からそのつもりでアイラをシオンとスティレットの下に派遣したのだが、それがよりにもよって王妃自らが上層部には内密にした上で、シオンとスティレットに亡命を勧めてくるとは。 「アンタらがこの国に『迷い込んでしまった』というのであれば、エミリア様も統治者としての立場を考えれば、アンタらを追い出さざるを得ない・・・だけど『正式な手続きをした上で亡命した』と言うのなら、アンタらを追い出す理由は無い・・・それがエミリア様のお考えなのさ。」 「いや、ちょっと待ってくれ。そんな事をいきなり言われても・・・。」 「そうだね。いきなり亡命しろとか言われたら、そりゃ驚くのも無理も無いだろうけどねぇ。」 コーネリア共和国は絶対中立、差別根絶を国の絶対的な掟として掲げており、それ故に10年前に今回の戦争が勃発した時にも、エミリアはルクセリオ公国にもグランザム帝国にも、どちらにも属さないという事を公式に表明している。 だからこそルクセリオ公国騎士団に所属するシオンも、グランザム帝国軍に所属するスティレットも、本来ならば早急に国から追い出さなければならない危険因子のはずだ。 それなのに、何故・・・驚きを隠せないシオンとスティレットに、アイラは穏やかな笑顔でタブレットを差し出したのだった。 「だけどよく考えてみな。アンタらがうちに亡命すれば、アンタらはこれから敵同士として戦う必要は無くなるんだよ?」 「「・・・はうあ(泣)!?」」 タブレットの液晶画面に映されていたのは、先日の城下町での戦いで、スティレットがシオンにキスをしている画像だった。 それを見せつけられたシオンとスティレットが、恥ずかしさのあまり思わず顔を赤らめてしまう。 「これはうちの国の戦場カメラマンが、命懸けて撮ってきた写真なんだけどさ。」 「いやいやいやいやいや、命懸けで何とんでもない写真を撮って来てるんだよ(汗)!?」 「リーズヴェルト少尉。アンタは何でアルザード中尉にキスなんかしたんだ?相手は敵国のエースなんだよ?それにさっきもアルザード中尉と、なんかイチャイチャしてたみたいだし。」 アイラに質問されたスティレットは恥ずかしそうにしながらも、それでも自分の正直な気持ちをアイラに素直に伝えた。 「・・・私にも、よく分からないんです。」 「はあ!?アンタ、理由も分からないのにアルザード中尉にキスしたってのかい!?」 「その・・・シオンさんと戦ってる内に、何だか急にそういう気分になったっていうか・・・。」 「はぁ・・・まあ私にはよく分からないけど、とにかくアンタらがこのまま国に戻れば、いずれアンタらは再び敵同士として、殺し合わなければならなくなるって事だ。」 「・・・そ・・・それは・・・。」 「・・・なあ、アンタら・・・本当にそれでいいのかい?」 とても真剣な表情で、アイラはシオンとスティレットをじっ・・・と見据えた。 このままだと2人は互いに殺し合わなければならなくなる・・・シオンもスティレットもアイラの言葉に戸惑いを隠せない。 よく考えたら互いに敵同士だという事を、2人は今まですっかり忘れてしまっていたのだ。 「アンタらの事情はよく分からないけど、このままアンタらを所属部隊に返して、再び戦場で殺し合いをさせたくはない・・・それがエミリア様のお考えなんだけど・・・っとっとっと。」 そこへ、応接室の通話機の着信音が軽快に鳴り響いた。 アイラはどっこいせとか言いながら席を立ち、受話器を手に取る。 「私だ。どうした?」 『ルクセリオ公国騎士団とグランザム帝国軍・・・両軍の輸送艦の熱源反応を感知しました。あと5分程で合流出来ると思われます。』 「あいよ。今アルザード中尉とリーズヴェルト少尉に大事な話をしてるから、しばらくそこで待機していろと両軍に伝えておいてくれ。」 『はっ。』 仲間たちが、もうすぐそこまで来ている・・・シオンもスティレットも気を引き締めるが、それでも先程のアイラの言葉が耳から離れない。 このまま国に戻れば互いに敵同士として、再び殺し合わなければならなくなる・・・だけど2人が亡命すれば、その必要性は無くなる・・・。 だが、それでも。 「・・・2人共どうする?今ならまだ引き返せるよ?何ならこのままアンタらを無理矢理城下町に連れて帰ってもいい。正式な亡命手続きなら、それからでも別に遅くは・・・。」 「・・・それでも僕は戻るよ。」 何の迷いも無い力強い瞳で、シオンはアイラにそう告げた。 アイラの言う通りこのまま亡命して、スティレットと一緒に暮らす・・・確かにそれも悪くないかもしれない。 それでもシオンは、戻らなければならないのだ。 「僕はルクセリオ公国騎士団に所属する軍人で、シオン隊の隊長なんだ。それに隊の皆が僕の事を心配しているだろうからさ。」 「・・・そうか。リーズヴェルト少尉はどうする?」 「・・・私も戻らないと・・・皆が私の事を心配してるはずだから。」 スティレットもまた、潤んだ瞳でアイラにそう告げた。 2人が亡命しないというのであれば、それを止める権限はアイラには無い・・・ならば上層部の命令通り、今から2人を他国の部外者として、それぞれの所属部隊に送り返さなければならない。 正直残念だが、それがシオンとスティレットの意思である以上は、アイラにはどうする事も出来なかった。 「・・・分かった。なら決まりだな。早急にアンタらの身柄を両軍に引き渡そう。」 6.帰還 その後、身柄の引き渡しの最中に両軍に交戦されたら困るという事で、まずは先にアーキテクトたちにスティレットの身柄を引き渡し、アーキテキトたちが去った後にシオン隊が合流、シオンの身柄を引き渡すという形になった。 無論、両軍に対して、互いの身柄の引き渡しが完了するまでは絶対にシオンとスティレットを攻撃するな、それが出来ないなら身柄の引き渡しには応じられないという条件付きでだ。 アーキテクトとナナミが、それを了承した事を通信でアイラに伝え・・・いよいよスティレットがフレームアームズ・ガール部隊に帰還する時がやってきた。 互いの輸送艦が地上に着陸し、シオンたちが地上へと降り立った瞬間・・・轟雷と迅雷が物凄い勢いでスティレットに抱き着いてきた。 「ステラ~!!本当に無事で良かったよぉ~!!」 「もう、本当に心配したんだからね!?ステラの馬鹿ぁっ!!」 「・・・轟雷ちゃん・・・迅雷ちゃん・・・心配かけてごめんね。私なら大丈夫だから。」 互いに抱き合いながら、3人は笑顔で互いの温もりを確認し合う。 その様子をシオンが、とても温かい眼差しで見つめていたのだが。 「よく無事で戻ったな。リーズヴェルト少尉。」 「・・・オラトリオ大尉っ・・・!!」 穏やかな笑顔で歩み寄ってきたアーキテクトに、スティレットは涙目で抱き着いたのだった。 そんなスティレットの頭を、アーキテクトがとても優しい笑顔で撫でてあげる。 戦場でシオンと戦っていた時は、まさに豪傑な軍人という感じだったのだが・・・この全てを優しく包み込む母性こそが、恐らく彼女の本来の姿なのだろう。 スティレットは心の底から、アーキテクトの事を慕っているのだ。それをシオンは改めて思い知らされたのだった。 もし、あの城下町での戦いで、シオンがアーキテクトを殺してしまっていたら・・・今頃スティレットと心を通わせる事が出来ていただろうか・・・。 「・・・アルザード中尉。それにアーテル中尉。リーズヴェルト少尉を無事に送り届けてくれた事に感謝する。」 「礼を言うのは僕の方だよ。貴方に撃墜された時にステラが助けてくれたから、こうして僕は無傷で戻る事が出来たんだ。ステラがいなかったら今頃僕はどうなっていたか・・・。」 「・・・ステラ・・・か。コーネリア共和国で、一体お前たちに何があったのかは知らんが・・・。」 他の幹部連中ならスティレットに対して、何を敵国の兵士と親しくなっているのだと厳しく断罪するだろうが・・・アーキテクトは深く追及するつもりは無かった。 スティレットが無事に戻ってきてくれた・・・それだけでアーキテクトには充分なのだ。 それにシオンはスティレットの事を守ってくれた。だからアーキテクトはシオンに対して、礼節を持って接しなければならないのだ。 「・・・オラトリオ大尉もいる事だし丁度いい。ステラ。君に話があるんだ。」 だが感動の再会もつかの間、シオンがとても真剣な表情でスティレットに突然そう切り出した。 アーキテクトから身体を離したスティレットは、戸惑いの表情でシオンを見つめていたのだが・・・次の瞬間シオンは、スティレットが全く予想もしなかった事を言い出した。 「単調直入に言うよ。君は軍人を辞めて、普通の女の子に戻るべきだ。」 「・・・え!?」 いきなりのシオンの言葉に、驚きを隠せないスティレット。 轟雷と迅雷がシオンに文句を言おうとしたのだが、それをアーキテクトが片手で制する。 「いいかい?これは君が抜ければ帝国軍の戦力が減るからラッキーだとか、そんな生ぬるい気持ちで言ってる訳じゃないんだ。」 「なら一体、どうして・・・?」 「僕は君と何回か戦ったから分かるんだ。君は今まで一度も人を殺した事が無いんだろう?」 「・・・そ・・・それは・・・。」 シオンはこれまで何度かスティレットと剣を交えてきたのだが、彼女の剣からは全く殺気が感じられなかった。 それにスティレットが城下町での戦闘の際、敵の武器や兵器だけを破壊して無力化するという戦い方を徹底していた場面を、シオンはその目で目撃していたのだ。 「君は間違い無くグランザム帝国軍の中でも最強の実力者だよ。だけど君は軍人としては優し過ぎる。その優しさが戦場では命取りになる事だってあるんだ。それはオラトリオ大尉にも厳しく言われていたんじゃないかな?」 「・・・それは・・・確かにシオンさんの言う通りですけど・・・。」 「勘違いしないで欲しいんだけど、別に君を責めているわけじゃないんだよ。人を殺せないというのは人として当然の事なんだ。だけど軍人である以上はいずれ仲間を守る為に、敵を殺さざるを得ないような状況に置かれる事になるだろう。」 自分の事を本気で心配してくれるシオンを、スティレットは潤んだ瞳で見つめている。 こんな優しい女の子に、人殺しをさせるわけにはいかない・・・人を殺す事に慣れさせてしまってはいけない・・・その想いがシオンの頭の中でどんどん強くなっていた。 いや・・・そんな物は建前だ。言っていることは正論だが建前なのだ。 シオンはスティレットと、もうこれ以上戦いたくはない・・・ただそれだけなのだから。 「・・・それに・・・今度戦場で君と出会ってしまったら・・・僕は国や仲間を守る為に、今度こそ本当に君を討たなければならなくなるだろう。」 「・・・シオンさん・・・。」 「軍人失格だと言われるかもしれないけど、僕はもう君を傷つけたくはないんだ・・・頼むから僕にそんな事はさせないでくれよ。オラトリオ大尉も、それでいいだろう?」 スティレットが性格的に軍人には向いていない事は、常に上官として彼女の傍にいるアーキテクトなら、充分に分かっているはず・・・そうシオンは確信していたのだが。 「・・・アルザード中尉。それは私が決める事ではない。リーズヴェルト少尉が自分の意志で決める事だ。」 「オラトリオ大尉・・・私は・・・。」 「お前がどんな選択をしようとも、私たちは決してお前を責めたりはしない。だからお前自身が決めるんだ。お前のこれから先の人生を・・・お前がこれからどうありたいのかをな。」 「・・・・・。」 スティレットもまた、シオンと同じ想いだった。 もうこれ以上、シオンさんと戦いたくない・・・シオンさんを傷つけたくない・・・その気持ちがどんどん膨らんでいるのを自覚しているのだ。 それに自分が戦場で敵を殺せないというのも、間違いなく事実だ。 大切な人たちを今度こそ自分の手で守りたい・・・その想いを胸にスティレットは軍人になった。 だがシオンの言うように、敵を殺さなければ大切な人たちが死ぬ・・・そんな状況に追い込まれてしまったとしたら。 そしてそんな状況で、もしシオンを敵として討たなければならなくなってしまったとしたら。 シオンを殺さなければ、アーキテクトが死ぬ・・・そんな場面に遭遇してしまったとしたら。 想像しただけで、スティレットは耐えられなくなってしまった。 「私も・・・これ以上シオンさんと戦いたくありません・・・だから私、軍を辞めます。」 「・・・分かった。除隊届は私の方から皇帝陛下に出しておこう。」 「ごめんなさい、オラトリオ大尉。身勝手な事を言っているのは分かっています。だけど・・・。」 「気にするな。お前がどんな選択をしようとも私は責めないと言ったはずだぞ?」 「・・・はい。」 思えばこれで良かったのかもしれない・・・アーキテクトも轟雷も迅雷も、心の底からそう思った。 寂しい気持ちは正直あるし、戦力的に大きな痛手なのは間違いない。 それでもスティレットにはいつまでも、自分たちの心を癒してくれる優しい女の子でいて欲しいから。 「だがアルザード中尉・・・今度戦場で出会った時は、その時は容赦無くお前を討つ。」 アーキテクトは何の迷いも無い力強い瞳で、シオンに宣戦布告をしたのだった。 スティレットを守ってくれた事には感謝しているが、それでも軍人である以上は、戦場でシオンに対して容赦をする訳にはいかないのだ。 シオンを討たなければ、戦場で数多くの同胞の命が失われる事になるだろうから。 「・・・僕もだ。オラトリオ大尉。」 シオンもまた、その想いはアーキテクトと同じだ。 アーキテクトを討たなければ、戦場で数多くの同胞の命が失われる事になるだろうから。 敵を討たねば、仲間が討たれる・・・戦場とはそういう所なのだ。 シオンもアーキテクトも互いに軍人として、人として、敬意をもって互いを認めている・・・それでも戦場の最前線で戦う以上は、シオンもアーキテクトも容赦をする訳にはいかなかった。 例えスティレットが、シオンとアーキテクトの事を慕っているとしても・・・それでも戦争が続いている以上は、2人は戦場で殺し合わなければならないのだ。 どうしてこの2人が殺し合わないといけないの・・・?スティレットは悲しい気持ちで一杯になってしまった。 「ステラ。この先、例え何があったとしても、生きる希望だけは絶対に失っては駄目だ。」 そんなスティレットの両肩に優しく両手を添えながら、シオンはスティレットに対してそう告げた。 「君の両親は死んだ。だけど君はこうして生き残ったんだ。だから君は死んでしまった両親の分まで、精一杯強く生きて幸せになるんだぞ。いいな?」 「・・・シオンさん・・・。」 潤んだ瞳でシオンを見つめるスティレット。 そのシオンの言葉にどこか懐かしさを感じるのは、スティレットの気のせいなのだろうか。 だがその時、アイラの端末のアラームが鳴り響いた。 そしてそのアラームは・・・シオンとスティレットの別れを告げる非情の鐘だ。 「・・・オラトリオ大尉。折角の感動の再会の所を申し訳無いけどさ、そろそろシオン隊との合流予定時刻だ。早急にここを立ち去ってくれないかい?」 「了解した。リーズヴェルト少尉を救ってくれた事、隊長として重ねて礼を言わせて貰おう。」 「あの、待って下さいオラトリオ大尉!!・・・アーテル中尉、最後に1つだけいいですか!?」 アーキテクトに右手を引っ張られながら、スティレットはアイラに必死に呼びかけたのだが。 「その・・・マテリアちゃんは今も元気でやっていますか?私はそれだけがどうしても気がかりで・・・。」 「・・・マテリア?」 聞き慣れない名前に、アーキテクトは不思議そうな顔をしたのだった。 だがスティレットがとても心配そうな表情をしている事から、スティレットにとって大切な人である事は間違い無さそうだ。 そんなスティレットを安心させる為に、アイラはとても穏やかな笑顔をスティレットに見せた。 「何だいアンタ、もしかしてマテリアの知り合いなのかい?あいつならエミリア様の専属秘書として元気でやっているよ。」 「そうですか・・・彼女が無事だったのなら、それでいいんです・・・良かった・・・。」 「ほら、安心したのならさっさと行きな。もうすぐここにシオン隊の連中が来るからさ。」 「・・・はい。」 名残惜しそうに互いを見つめ合うシオンとスティレット。 だがそれでも現実は残酷だ。別れの時が容赦無くシオンとスティレットに訪れる。 アイラが言っていたが、もうすぐシオン隊がここに合流する時間だ。それまでにアーキテクトたちは早急にこの場を離れないといけないのだ。 「ステラ・・・元気で・・・いや・・・この戦争が終わったら、必ずまた会おう。」 「シオンさん・・・。」 「いいな?必ず生き延びて幸せを掴み取るんだぞ?死んでしまった君の両親の分まで。」 「・・・はい。シオンさんもお元気で。」 アーキテクトに右手を引っ張られ、スティレットは名残惜しそうにシオンを見つめながら、輸送艦へと乗り込んでいく。 そのスティレットの姿を、シオンは神妙な表情で見つめていたのだった。 本当にこれで良かったのだろうか・・・その小さな雑念を胸に抱きながら。 「シオンさん、また会いましょう!!この戦争が終わったら、いつか必ず!!」 「ああ、必ずだ!!約束しよう!!」 輸送艦に乗り込んだスティレットに、シオンは穏やかな笑顔で手を振ったのだった。 7.忍び寄る不安 その後、無事にマチルダたちに救助されたシオンだったのだが・・・それから城下町へと帰還後、休む暇も無く翌日の上層部の会議に出頭させられる事になってしまった。 全く、今日は久しぶりの休日だってのに・・・シオンは心の中で愚痴をこぼしたのだが、それでも軍人である以上は上層部からの命令には従うしかない。 シオンに出頭命令が下されたのは、やはりシオンのコーネリア共和国領地内での遭難時の一連の行動が、大臣たちに問題視された事が理由だった。 敵国の兵士であるスティレットと共同生活を送ったばかりか、あろう事か心を通わせ・・・しかも終戦後の再会の約束までした。大臣たちはシオンの一連の行為を、悪質な国家反逆罪に値すると断罪しているのだ。 「・・・以上の理由から、我々はアルザード中尉の中尉階級を剥奪し、国家反逆罪で投獄すべきだと判断する物である!!」 「ですから先程申し上げた通り、僕がステラと一時休戦していたのは、中立国であるコーネリア共和国の領地内で戦闘をしてしまえば、重篤な国際問題になってしまうからです。それの一体何がまずいと言うのですか?」 「敵国の兵士が無防備な姿を晒していたのだぞ!?それを何とかしてごまかしてでも殺すのが貴様が本来やるべき事だろうが!?」 「そもそもステラは軍を辞めました。もう彼女が我が国の脅威になる事は無いでしょう。」 「そんな物は結果論に過ぎん!!我々は過程を問題視しておるのだ!!」 大臣たちは、どうあってもシオンを罪人として処分したい意向のようだ。 それは敵国の兵士・・・それもエースであるスティレットを、むざむざと見逃したというシオンの行動を問題視したから・・・それだけが理由ではない。 彼らはただ単に、シオンの事が気に入らない・・・それだけなのだ。 幼少時に両親に捨てられた薄汚い孤児風情が英雄として称えられ、ジークハルトからも高い信頼を置かれている。それが彼らには気に入らないのだ。 それに妻と娘を10年前に戦争で失ったジークハルトには、正当な後継者がいない・・・そしてジークハルトもまた再婚は全く考えておらず、自分の死後は自分が最も信頼出来る者に国王の座を託す事を公言している。 このままでは薄汚い孤児であるシオン如きに、次期国王の座を取られてしまう・・・だからこそ理由を付けて、何とかしてシオンを処分してしまおうと、彼らはそれを企んでいるのだ。 シオンがこれまでこの国の為に、どれだけ尽くしてくれたのか・・・シオンのお陰でどれだけ多くの命が救われたのか・・・それを考えもせずに、あまりにも身勝手な理由でだ。 「陛下、どうかご決断を!!この裏切り者を即刻投獄すべきでは!?」 「では逆に聞くが、お前が仮にシオンの立場だったならば、お前はどう行動する?」 「そんな物は聞くまでも無いでしょう!?事故死に見せかけてリーズヴェルト少尉を殺す!!それ以外の何がありますか!?」 「全く話にならんな。シオンの主張が全面的に正しい。貴様らはまともな状況判断も出来ん、ただの愚か者の集まりだ。」 「な・・・!?」 ジークハルトは威風堂々と腕組みをしながら、大臣たちの主張を一蹴したのだった。 シオンも直立不動のまま、表情一つ変えずにジークハルトを見据えている。 「コーネリア共和国は中立国だ。だからこそ我々と帝国の奴らがトラブルを起こせば、ただそれだけで国際的な大問題になるのだぞ。」 「ですから、だからこそ事故死に見せかけて・・・」 「事故死だろうと何だろうと関係無いのが分からんのか。理由や過程など問題ではない。あそこでリーズヴェルト少尉が死ぬ事自体が問題になると言っているのだ。」 シオンが傍にいる状況でスティレットが死ぬ・・・そうなれば当然ルクセリオ公国は、コーネリア共和国からの厳しい追及の目を受ける事になるだろう。 中立国の領地内で敵同士の2人が問題を起こし、その結果どちらかが死ぬような事態になった・・・それが問題なのだ。それだけで重篤な国際問題になってしまうのだ。ジークハルトが言うように、事故死だろうと何だろうと関係無いのだ。 それにコーネリア共和国とて中立の立場を貫いている以上、国境付近に何らかの監視網を敷いていたと考えるのが妥当だろう。でなければアイラたちがあそこまで迅速にシオンとスティレットの現在位置を正確に特定し、救助に行けるはずがない。 つまりそれはシオンとスティレットの領地内での一連の行動が、完全にアイラたちに筒抜けになっていた事を意味するのだ。それに加えてスティレットはグランザム帝国軍最強の実力者・・・こんな状況では事故死に見せかけて殺すなど不可能だ。 全く状況判断が出来ていない・・・ジークハルトは大臣たちに心の底から失望していた。 「それにシオンがこれまで我が国に、どれだけの貢献をしてくれた?どれだけ多くの兵や民の命を救ってくれた?どれだけ多くの敵兵を打ち倒してくれた?」 「そ、それこそ陛下が言うように、そんな物は関係無い・・・」 「そのシオンを正当な理由も無しに投獄する事自体が、兵や民たちの強い反感を招くという事が分からんのか?」 「・・・そ・・・それは・・・」 「シオンが何か重大な犯罪行為をしでかしたというのなら、話は別だがな。だがシオンはあの状況で正しい判断をした。そのシオンを投獄する理由など何も無いだろうが。」 「し、しかしですね陛下、こやつは・・・!!」 「お前はこの国で暴動でも起こしたいのか?」 「・・・ぐ、ぐぬう・・・!!」 ジークハルトに立て続けに主張を潰され、とても悔しそうに黙り込んでしまった大臣たち。 そんな大臣たちを無視し、ジークハルトはシオンに向き直る。 「・・・あの娘に死んだアルテナの面影でも重ねたのか?シオン。」 「いや、僕はステラに対して、そんな・・・」 「まあ良い。お前も聞いての通り、今回の一件に関しては不問とする。休日なのに戻ったばかりで疲れている所を、わざわざ呼び出して悪かったな。もう下がっていいぞ。」 「はっ。」 ジークハルトに敬礼をして、シオンは会議室を出ていく。 背後から大臣たちの、自分への侮蔑の視線を感じながら。 「・・・ふう。」 溜め息をつきながら扉を閉めたシオンに、先程から部屋の外で待っていた私服姿のナナミが、心配そうな表情で駆け寄ってきた。 予想もしなかった人物の登場に、シオンは戸惑いを隠せない。 「うおわあああああああっ!?」 「シオン隊長!!」 「ナナミ!?何でここにいるんだ!?今日は休みのはずじゃ・・・」 「大臣たちに一体何を言われたんですか!?どんな酷い処分を下されたんですか!?私はもう心配で心配で、居ても立っても居られなくなって・・・!!」 「いや、特に何も処分は下されていないから、心配しなくていいよ。」 苦笑いしながらそう告げたシオンを見て、ナナミは心の底から安堵したのだった。 「良かった・・・シオン隊長がお咎めなしで・・・。」 「別に咎められるような事は何もしていないからさ。ただ大臣たちからは色々とネチネチと悪口を言われたけどね。」 「そんな、シオン隊長は何も悪くないのに、それを悪口なんて・・・!!」 「いいんだよ、本当に大した事じゃないから。それじゃあ僕はこれで帰らせて貰うけど・・・。」 アパートの部屋に戻ろうとしたシオンの右腕を、ナナミが慌てて両腕で抱き締める。 いきなりの出来事に、シオンは戸惑いを隠せない。 心配そうな表情で自分を見つめるナナミの豊満な胸が、シオンの右腕に思い切り当たっていた。 その柔らかくて優しいナナミの胸の感触に、思わずシオンはドキドキしてしまう。 「・・・あ・・・あの・・・ナナミ?」 「私・・・最近不安なんです。シオン隊長が私たちの前からいなくなっちゃうんじゃないかって。」 「いや、僕はルクセリオ公国騎士団の軍人だし、君たちの隊長なんだから、そんな事・・・。」 「シオン隊長がオラトリオ大尉に撃墜された時・・・私、凄く不安だったんですよ?しかもリーズヴェルト少尉まで一緒に墜落して、隊長と2人きりになって・・・一時はどうなる事かと・・・。」 「それでも僕はこうして無事だから。それにステラならもう軍を辞めたからさ。」 そう・・・スティレットは軍を辞めたのだ。だからこそスティレットが、もう敵として戦場に出て来る事は無い。これで心置き無く戦いに集中出来る・・・そうシオンは思っていたのだが。 「・・・本当に、簡単に辞めさせて貰えるのでしょうか?」 ナナミが不安そうな表情で、そう呟いたのだった。 「シオン隊長は仰っていましたよね?リーズヴェルト少尉は帝国軍最強の剣士だって。」 「それはまあ・・・確かにそうなんだけどさ。」 「それ程の使い手であるリーズヴェルト少尉を、軍の上層部がそう簡単に辞めさせるのでしょうか・・・?」 ナナミの言う事は最もだ。今この戦況で簡単にスティレットに辞められたら、グランザム帝国軍だって困るのは当然だろう。 だがそれでも戦意を無くしてしまったスティレットを軍に置いた所で、はっきり言って邪魔にしかならない事は分かっているはずだ。それにこの件に関してはアーキテクトも了承しているし、スティレットの代わりに除隊届を出すとまで言ってくれているのだ。 「いや、辞意を表明した軍人を無理に引き留めるのは、重大な国際条約違反じゃ・・・」 「そんな簡単な問題じゃないと私は思うんです・・・本当に彼女はこのまま戦場に出て来ないのでしょうか・・・。」 「・・・それは・・・。」 ナナミの言う事を聞いている内に、本当にこれで良かったのかと・・・シオンも心の奥底で不安が広がっているのを感じていた。 あのままスティレットを帝国に返す事が、最良の選択だったのか・・・いやでも、あの状況ではそれ以外に選択肢など無かったはずだ。 コーネリア共和国に亡命させれば、スティレットは慕っていたアーキテクトたちと離れ離れになってしまう。かといってルクセリオ公国に無理に連れて帰ったとしても、敵国の兵であるスティレットに待っているのは処刑だけだ。 なら帝国に戻して、軍を辞めさせるしかない・・・そうすればスティレットはアーキテクトたちと一緒にいられる・・・それが最良の選択のはずだと・・・そうシオンは確信しているのだが。 「いやでも・・・あれで良かったはずだ・・・そうだ、ああする以外に無かったはずなんだ・・・。」 「・・・シオン隊長・・・そんなに彼女の事が心配なんですか?」 「え?ああ、うん・・・そりゃあね。」 シオンは心の奥底で広がる不安を、先程から隠し切れずにいた。 スティレットは軍を辞めた。これからは民間人として戦いとは無縁の、平穏な暮らしが待っているはずだ。 それなのに・・・これで本当に良かったのかと・・・言いようの無い不安と後悔が、先程からシオンの頭の中をぐるぐると渦巻いていた。 それを必死に否定しようとするシオンだったが・・・それでも完全に否定し切れずにいた。 スティレットを帝国に返して、本当に良かったのかと。 (・・・そうさ、これでステラは平穏な日常を取り戻せる・・・これでいいはずなんだ・・・これで・・・。) 頭の中で必死に言い聞かせるシオンの顔を、ナナミがとても不安そうな表情で見つめていたのだった。 前半へ 戻る
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